2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年8月25日

負けられない「市場争奪戦」

 そして前述の人民日報論文は、まさにこのような立場から書かれたものであるが、その中で韓氏は、「イデオロギー闘争」、「領土闘争」、「反腐敗闘争」など、共産党政権の直面する「8つの新しい闘争」を取り上げ、それらを勝ち抜くために「国内外の敵」と徹底的に戦うことを党員幹部に呼びかけた。

 中国の場合、中央党校副学長たる人は人民日報で「闘争」を提言すると、それは往々にして共産党政権の政策に反映されて実際の「闘争」となってしまうケースが多い。たとえば韓氏の論じたところの「反腐敗闘争」や「領土闘争」は今や実際、習近平政権がもっとも力を入れている内外政策の二つとなっていることは周知の通りだ。

 そして、前述の「8つの闘争」の一つとして、韓氏は「市場争奪戦」について述べ、「わが国の巨大市場を巡っての西側諸国との争奪戦は1日も止んだことがない」と指摘した上で、そのための「闘争」を展開していくことを提言しているのである。

 確かに韓氏の言う通り、中国に進出した西側諸国の多くの企業は今、「13億の大市場」を狙って中国国内企業と熾烈な「争奪戦」を展開している。しかしそれはあくまでも正常なビジネス活動で、普通の商業競争の範疇に属するものである。第一、外資企業の中国進出を積極的に受け入れた時点で、中国政府は既に国内市場の一部は外資によって切り開かれることを容認しているはずであり、外資企業もまさにこのような前提において中国に進出したわけである。

 このような経緯からすれば、韓氏の論理はいかにも乱暴なものであることが分かる。中国政府は外資企業の中国市場進出を容認していたのに、今さらになって、政権党の理論的権威たる人物が、中国市場における外資企業の通常のビジネス活動を「中国市場の争奪戦」と捉えた。まさに政権党の立場から、それに対する「闘争」を宣したのだ。

 この論理からすれば、外資企業が中国市場で展開する競争・競合活動のすべては中国に対する「敵対行為」と見なされ、外資企業そのものは彼ら中国共産党の「闘争する」相手となるのである。


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