2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2014年9月11日

 ところが、このプレゼントをめぐり、その日の晩、騒動が起きた。父親のブクワは自転車をみて「すぐに大きくなるのに子供用自転車を買うなんてもったいない」と激昂した。母親は、とにかく自転車が中国製であることが気に入らない。彼女は「規格が似通った新品自転車はすぐに盗まれる。盗まれなくても中国製品は数カ月で壊れる。いますぐに中古自転車と交換してきなさい」と金切り声をあげた。だが、子供たちは「中古のおしゃれな子供用自転車は値段が高い。それに中古では、壊れても部品が手に入らない」と徹底抗戦の構えだ。しまいには近所の住人を巻き込んで、丈夫で性能の良い中古自転車か、安くて部品が手に入りやすい中国製の新品自転車かで、大論争になった。

 結局、私は翌日店に戻って、少し大きめの無難なデザインの中古自転車に買い替えた。ちなみに中古自転車のほうが値段は高く、9万(約5600円)であった(写真1)。

9万シリングの中古自転車(写真1 )(SAYAKA OGAWA)

 タンザニアの消費者は、自転車に限らず、中古品と中国製品のどちらを買うか、あらゆる商品の買い物で葛藤している。

 「中古の日本製のブラウン管テレビなら3年はもつ。新品の中国製薄型テレビは、2年もつかどうか」「本物のナイキのスニーカーは長持ちする。だが中古で最新の型を安く手に入れるのは難しい。中国製の偽物ナイキは中古品の半額で簡単に手に入るが、3日で靴底が剥がれる」。

 誤解されがちだが、タンザニアの消費者は、SONIやHITATIといった中国製の模造品やコピー商品と、オリジナルのSONYや製品の違いを中古品との比較でよく理解している。大半の庶民にとって、新品のオリジナル製品は手が届かないが、中古品なら手に入るのだ。自転車に限らず、大半の中古品の価格は、輸送費や関税で決められる。

 たとえば、日本の中古自転車なら、不法駐輪された自転車や一般家庭から廃品回収された自転車などが輸出されている。この原価がほとんどかからない中古品と同じ価格、むしろ安い価格で販売されているのが中国製品なのである。


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