周が腐敗堕落した怪物であったという噂を流すことはたやすい。しかし、同時に、そのような人物が中国共産党のヒエラルヒーの7位にとどまっていたという事実は、現在の共産党支配が如何に正統性を欠くものかを物語るものである。
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政治局常務委員クラス以上の党幹部(現在7名)に刑事罰を課さないことは、鄧小平時代以来の不文律であったと言われる。天安門事件(1989年6月)の際の党総書記であった趙紫陽の扱いについても自宅軟禁の処置にとどまった。
その意味からも、今回、周永康元政治局常務委員を有罪に処するためには、同人が如何に腐敗堕落していたかを立証する必要がある。ただし、この点を強調しすぎる場合、一般国民は共産党支配の正統性にあらためて強い不信感を抱くことになるだろう、とのミンシン・ペイの指摘は、そのとおりである。
「虎もハエも叩く」という掛け声は一見勇ましいが、習近平指導部を含め、腐敗堕落と無関係な共産党幹部がはたして存在するのかというのが、今日の中国共産党の実態ではないかと思われる。宣伝により相手を貶めるという効果を狙っているのであろうが、周永康一族(元部下、親族を含む)の不正蓄財は1兆5000億円を下らないとされる。ちなみに、かつてしばしば「政治改革」を唱えた温家宝元首相の一族による蓄財は2300億円と報道されたが、その実態も明らかにされていない。
今日の共産党指導部内の権力闘争は文革時の権力闘争を想起させるほど熾烈であるが、両者の根本的な相違は文革時には金銭的な腐敗汚職は全くといっていいほどなかったことである。
今後、習近平体制がどのように強固な指導体制を築いていけるかは、特に周永康の長年の後ろ盾であったと言われる江沢民らの「上海グループ」との関係を如何に処理するか、また胡錦濤の系列の「共産主義青年団」との関係をいかに処理するか、などにかかっている。その処理ぶり如何によっては、これまでの党内派閥の均衡が崩れ、習体制が不安定化することは十分に考えられる。
今回の周失脚に関連して、軍内でも新しい動きがある。元中央軍事委員会副主席の徐才厚の失脚である。最近の「解放軍報」などにも見られるように、習近平体制下で軍人の発言力が相対的に高まりつつあるが、これが徐の更迭に関連しているのかどうか、今後注視する必要がある。
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