2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月10日

 8月1日付のナショナル・インタレスト誌のサイトで、Minxin Pei米クレアモントマッケナ大学教授が、習近平としては、周永康を重罪に処すために、周が如何に腐敗堕落していたかを宣伝したいにちがいないが、そうすることは中国共産党のイメージを大きく損なうことになる、と述べています。

 すなわち、中国では一般に、国民たちからは周永康元政治局常務委員の失脚は朗報と受け取られているようだ。しかし、中国共産党の幹部たちは複雑な気持ちでこの失脚事件を見ているに違いない。多くの党幹部たちは習近平の「虎もハエも叩く」という方針が自分たちにも適用されるのではないかと恐れている。

 周が実際に何を行ったか、周の親族、部下たちがいかなる汚職をしたか、ということは今ではたいした問題ではない。周はいまやもっとも腐敗した党幹部の代表である。つまり、中国人の言うように、「すべてのカラスは黒い」のであり、共産党内部の人間で清潔であり、まともな役人はほとんどいないということになる。

 共産党は周や一族郎党たちがいかに、野蛮で貪欲でふしだらかということを描き出す。共産党は処罰すべき人間たちを悪魔に仕立て上げるのがうまい。そうすることで自分たちを正当化し、彼らが一片の同情にも値しないことを示そうとする。周永康や薄熙来(元政治局員)には、一切の見るべき価値などないのである。

 周の立件については、公式には7月29日に77文字のごく短い声明が発表されただけである。にもかかわらず、周はすでに世論という裁きの場では有罪にされてしまっている。真実が乏しい独裁体制下では悪意に満ちた噂や陰謀説がまことしやかに流布されることになる。例えば、周永康は最初の妻を殺害し、薄熙来の失脚後にはクーデターによって習近平を暗殺しようとしたという噂話が流れ、結婚をめぐってのスキャンダルが追い打ちをかける、という具合である。


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