組織部が視察を行い幹部の理解を図るのは多様な方法で行われるが、もっとも有効なのは面談である。一人の部長(大臣レベル:筆者)の選抜のために同部が面談をする人は100人に上る。「組織部による面接」は厳粛で重要で、面接時の一語一句、話の際の態度、些細な表情さえ判断基準になるという。
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建国当初(1949年)は中央組織部による幹部選抜では戦争での功績や戦争経験が重視された。1963年には全国2074人の県・市の党委員会書記(県〔日本でいう町レベル〕レベル各自治体のトップ)のうち76%が抗日戦争への参戦経験、22%が解放戦争(国共内戦:筆者)への参戦経験があり、「解放後」(1949年の中国建国を指す:筆者)に任についた者は2%に過ぎなかった。「改革開放」後には技術幹部が重視されるようになった。学歴も1988年には各省の1655人の庁級(各部門のトップ、局に相当:筆者)の幹部のうち短大卒以上が56%を占めた。彼らの多くが同部に選抜され、予備幹部名簿に登録され、後に党や国の指導者となった。
中央組織部は中国共産党の最も重要な組織機構の一つだ。毛沢東、周恩来、陳雲、鄧小平、胡耀邦も中央組織部部長(大臣に相当:筆者)を歴任した。多くの党員幹部にとって中央紀律委員会が「帽子を脱がせる」(解任する意:筆者)なら、中央組織部は「帽子を被せる」(職を任命する意:筆者)部門だ。組織部の地位は高く、幹部が地方視察に行くと地域トップがわざわざ出迎える。同部青年幹部局の李志民局長らが省長人選のために黒竜江省を視察した際には8日間の視察で同省指導者全員と話をし、省トップの党委員会書記と単独で2回話し合いを持ち、そのうち一度は午後まるまる話し込んだという。
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しかし、同部で仕事をした経験のある人によれば同部の任務は楽ではないという。人を怒らせたり、誤解を招くことはざらだ。中央組織部が担う組織、幹部グループ、人材グループ構築などの役割は党中央の「助手であり参謀」とされる。党建設と幹部人事管理の二つの任務を担う。中国共産党には400万の末端の基層党組織があり、中央組織部組織局が責任を負う。組織局は8000万人の党員の管理と教育も担う。この巨大な組織は中央から省、市、県、郷鎮に至っており約10万人が運用に携わる。
1985年データでは、組織系統に合計9万6615人の幹部がおり、うち中央組織部が509人、省党委員会組織部で2741人(各省平均94人)、各地地級市党員会組織部に1万7087人(各地級市平均47人)、県・市組織部で3万7928人(各県平均で17人)、郷・鎮の組織委員が3万8350人だった。