外部との唯一の連絡チャンネルだ
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「指導グループ」をどう管理するか。張元部長によるとそれは「トップをきちんと管理する」ことだ。1993年に張元部長は「二つの30(人)」をしっかり管理する、と提起したが、この30(人)とは各省の党委員会書記と省長を指す。この指導部を監督管理するために中央組織部に幹部監督局が置かれ、不正の通報を受け付けている。通報電話12380窓口だ。民衆が同部と連絡できる唯一の手段である。同庁舎には看板が掲げられておらず、電話番号も電話帳に掲載されていない(ホームページも未公開:筆者)。ビルからかけられる電話は番号が表示されず、呼び出し時には並んだゼロが表示されるに過ぎない。
このように中央組織部は秘密のベールに包まれ、その職員が公開の場に現れるのも稀有だった。彼らは省や部のトップと話す機会が多く、それぞれの部門の民主生活会(いわゆる業務反省会:筆者)に参加するが、意見は言わない。会議ではノートを取って聞き終わったらすぐ退去し「透明人間のよう」だという。
しかし近年、中央組織部はこのベールを脱ぎつつある。2005年7月、李景田副部長は国務院新聞弁公室の記者会見に出席し、内外メディアの注目を浴びた。2010年6月、同部は党内統計を公表する際にそれまでの書面公表を改め、記者会見を開き、スポークスマンも配置された。
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【解説】
これまで一切公開されることなく神秘のベールに包まれていた党中央組織部についてレポートが出されたこと自体非常に興味深い。この部門について『中国権力者たちの身上調書』(アンドリュー・ネイサン、ブルース・ギリ著、2004年)という本で指導者に焦点を当てて紹介されたことがあるが、米国の研究者が暴露的に書いたものだ。同書で描かれる指導者像の材料となったのはこの中央組織部の資料とされる。今回のレポートの背景は定かではないが、各地で繰り広げられる汚職取締りと関係あるだろう。取締りだけでなく、透明性確保も視野に制度改革が模索されているのだ。
党の組織人事に関して最近、注目を浴びているのは山西省指導部を巡る汚職摘発の動きであり、13人の党委員会常務委員のうち8人が摘発され(9月8日現在)、まだ続きそうだ。特に党組織部との関係では山西省トップだった袁純清党委員会書記が事実上降格の中央農村工作領導小組副組長に異動になり、吉林省党委員会書記だった王儒林氏が後釜に就任したことが話題になっている。