2024年4月26日(金)

対談

2014年10月6日

飯田:翌年から維持費が爆発する。

木下:待ち受けるは維持費地獄、建設時に行った地元負担の借金地獄ですよね。維持費と借金で自治体が潰れていく。でもこういう計算が全然なされていない。施設整備計画が発表されて資料が公開されても、どこを探しても総事業費しか出ていないことがほとんどです。国がいくら出してくれたとか、そういうことしか発表されないし、地元紙にも出ていない。たとえば100億円の庁舎を建てたら年間の維持費がどれくらいになるのか、財政根拠はどうなっているか、そんな情報は一切出ない。議論もされない。

飯田:僕はかねがね、「シムシティ」は維持費の設定を厳しくするべきだと思っているんです(笑)。

木下:シムシティでは維持費の概念が弱いですよね(笑)。道路とか延伸すればその分、歳出は増加しますが、もっと現実に則して重くしたほうがいいですね。

飯田:建てるときだけ金がかかって、そのあとはそこから税収が上がってくる設定だったりしますからね。赤字になることはあるけど、もっと維持費を厳しくしていい。わけのわからない場所にわけのわからないものを建てたら、ひたすら金が出ていくだけという設定にすべきです(笑)。むしろ壊したほうが安上がりになることさえあることを、教えるべきだと思います。

木下:そうなんですよ。そんな事業はやればやるほど、地方が苦しくなる。作っているときはお金が回るし、人も雇用される。でも工事が終わった瞬間から地獄が始まります。ずっと財政支出が続くことの怖ろしさが、ほとんど社会に共有されていないことが不思議です。地方議会では常にこういう議論をすべきだと思うのですが、基本的には作りたい人たちしか集まっていない。作らせて、工面できれば万事OK、という世界です。

飯田:地方議会でもわかっている人はわかっているはずです。わかっていて、口をつぐんでいたほうがトクだという計算が働いているのだと思うんです。地方議会や住民だけではなく、日本国民のほとんどに維持費という概念があまり理解されていない。たとえば家を買ってずっと住んでいると、老朽化してくる。それでもまあいいじゃないか、と思えるのはそれが一戸建てだからなんですよね。

木下:タワーマンションなんかの長期修繕計画は大変ですよね。多くの場合、長期修繕積立が安すぎるという話もあります。でも即座に売るためには安く見せないといけない。分譲マンションについては、30~40年後にはおそらく……

飯田:大変なことになりますよね。

木下:都内でも、区役所の上層階をマンションにした大型複合施設が数年後に完成しますが、あれ、建て替えのときはどうするんでしょうか。賃貸か、せめて定借物件として売るのならまだいいのですが、分譲など区分所有で売ってしまったら、次の建替えの時、実務的には建て替えできなくなるんじゃないでしょうか。

飯田:そういえばそうだ(笑)。


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