2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2014年10月7日

未来に対する責務を放棄してよいのか

 7月、小保方晴子氏の学位(博士号)の資格について過去に遡って調査した早稲田大学の委員会が結論を出した。その内容は「著作権の侵害行為が11箇所あり、形式上の不備等が15箇所あり、論文の信憑性、妥当性は著しく低いのだが、学位取得は認める」というもの。多くの大学人が首をかしげた。裁判で言えば、判決と判決理由の間に普通の頭脳では理解できないギャップを見たからだ。

小保方晴子氏の博士論文に関する早稲田大学の調査委員会の報告書を手にする鎌田薫総長(AP/JIJI)

 この結論の背景については、調査に当たった人物の肩書きを見てみるとおおよその想像がつく、弁護士を委員長とし、いずれも匿名の2人の国立大学医学部名誉教授に2人の早稲田の現役教授を加えた5人の委員会。これに更に3人の弁護士が補佐委員として加わる。読み取れるのは、早稲田の調査委員の選択に当たっての民事裁判への強い意識である。

 STAP事件で理研の調査委員会を立ち上げた際、調査内容を一部に限定したのも民事訴訟を念頭に置いてのことであったことは、既に広く知られている。立ち上げの際の委員長が辞任した後、それを受け継いだのも弁護士であった。

 早稲田が日本のリーダー的存在であるなら、それなりに担うべき使命というものがあるはずだ。それはわが国が輩出するPh.D.の質を世界に向けて保証すること。リーダー的立場の大学が輩出する人材の質が粗悪なら、他は推して知るべしと見られるからだ。


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