2024年4月16日(火)

うつ病蔓延時代への処方箋

2014年10月9日

 ―― では、メンタル不調者を発生させない職場を作ることは可能だと考えますか。

亀田:可能ですが極めて困難です。本当に日本の職場を改善しようとするならば、家庭教育からスタートしなければ無理でしょう。子どもの教育だけでなく大人も勉強し続けなければいけません。外資系企業での産業医経験で知ったことは、米国人は自分で多くの知識を得てから相談にくる傾向があります。日本は医者任せという面が強いですね。これはいわゆるリテラシーの違いということでしょう。日本人に足りない部分を補い、向上させることが大事です。それはネットやテレビから得る情報ではなく、効果的に暮らすための情報を身に付ける努力をすることでしかできないと思います。

 もう一点、ストレスの強い職場であれば、企業は成長して行けるはずがありません。それに経営者が気付くことが大切です。高度成長期以降の日本企業では、成績の良い人を出世させる傾向が定着しています。成績の良い人は生物学的にも社会学的にも自分のために努力している人が多い。思いやりや人の痛みを分かる人もいますが、それは成績の良さとは別な要因です。

 競争させ評価していく仕組みは、ストレスを強くかける上司を作り出します。この仕組みを変えていければ、働きやすいメンタル的に優しい職場ができるかもしれません。グローバル化やIT化など経済が激変する時期において経営者がどう判断するかです。

 商業主義に振り回されている個人の問題もあります。ネット、テレビ、新聞で悲惨な状況が目を引くので、そればかりが強調され垂れ流される。多くの働く人は、その影響を受けてしまう。元気が出る情報をもらうことは稀です。こういう状況を問題視し反発できるムーブメントを家庭、職場、社会全体で作ることができれば、自ずと職場環境も変化していくでしょう。

 

  
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