「お陰様で店頭はハイブリッド車(HV)人気に沸いてますよ。でも『プリウス』に続くHVも(レクサスを除く)全4チャンネルでの併売になるようだ。今後はHV人気が系列の違いをないものにするのではないでしょうか」。首都圏のトヨタ自動車系ディーラー関係者はこう言って苦笑した。
トヨタが5月18日、満を持して発売した新型HV『プリウス』。最廉価モデルが205万円という低価格に加えて、燃費性能や排気量を1800ccにアップさせたことによる走りの良さなどが評価され、6月初旬時点での受注台数は14万台を突破する爆発的な売れ行きだ。一足先に発売されたホンダの新型HV『インサイト』も「引き続き好調さを持続」(小林浩ホンダ執行役員)しており、トヨタ、ホンダ両社による〝ハイブリッド戦争〟は沈滞する国内新車市場のカンフル剤になってきた。
確かに少子高齢化や大都市圏でのクルマ離れなどの直撃を受けた国内新車市場(軽を除く登録車)は、5月も前年同月比19.4%減の17万8503台で、「5月としては統計を取り始めた1968年以来、最低」(日本自動車販売協会連合会)となるなど、回復の気配はみられない。だが、店頭での受注状況などでは着実に変化の兆しも見えてきた。
国内販売体制に一穴を空けたプリウス
きっかけは4月からスタートした低炭素車を対象とした自動車取得税と同重量税の減税や、エコカー購入に伴う補助金制度の導入など政府による景気喚起策。トヨタの一丸陽一郎専務も「(登録までにはタイムラグがあるが)受注ベースで4月は2割増。明るさは出てきた」と話す。
トヨタやホンダに比べて話題のHVがないため苦戦気味の日産自動車などでも、それなりの手応えを感じている。有力ディーラー、群馬日産自動車の天野洋一社長も「(HVのように100%減税ではないが)『ティーダ』など小型車を中心にエコカー減税対象車15車種を揃えている。積極的なPR活動によってユーザーの反応も良くなってきた」と更に周知活動を強化していく構えだ。
だが、市場での反応はHV一色。名古屋トヨペットの小栗一朗副社長も「ハイブリッド様々ですよ。これまではチラシを配っても見向きもされなかったが、『プリウス』の発売を機に店頭は様変わりです」と新型HVの客寄せ効果を強調する。