それにディーラー各社が改めてユーザーとの接触策のツールとして重要視しているのがエコカー買い替えに伴う補助金の交付制度。とくに車齢13年以上の高車齢車をエコカーに買い替えると25万円の補助金が交付されるため、制度の説明をテコとした接触は効果抜群。天野群馬日産社長も「高車齢車のユーザーを洗い出し、制度の説明に力を入れているが、これがきっかけとなってエコカーラインアップの周知もしやすくなった」と強調。4月以降の受注回復につなげているようだ。
一連の動きが意味するところは何か。これまでのディーラー経営は、とにかく新車を拡販するという、メーカー側の論理に沿ったものだったと言ってよい。その論理が成り立たなくなってきたことは、国内市場の低迷や、日産やホンダなどのディーラー再編に明らかで、いよいよトヨタにおいても同じ波が押し寄せてきたと言えるのではないか。
財産であるストックに着目し、独自のアイデアを工夫して新サービスを開発したり、ユーザーをつなぎとめたりしているディーラーの動きは、顧客との接点を強めようというもの。言うなればメーカーの論理からの脱却を掲げた動きなのではないか。
しかし、さしものトヨタも、その動きは狙いの範囲内なのかもしれない。トヨタは来年1月、マーケティング新会社「トヨタ・マーケティング・ディベロップメント(TMD)」(仮称)を設立する方針のようだ。ユーザーニーズと乖離した新車開発体制などを抜本的に見直す意図があり、そこではディーラーが今、生き残りをかけて吸い上げている顧客情報を活用することによって、きめ細やかな対応をする狙いもあるとみられる。今の動きが顧客回帰の突破口になるのか、国内市場の浮沈を占うポイントとして注視する必要がある。
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