2024年6月15日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月14日

 「それは習近平国家主席の進めた『ぜい沢禁止令』(八項規定 六項禁令)の影響です。公務員でなければ関係ないとはいえ、ブランド品を遠慮なく買うことのできる人といえば公共事業で潤っている中国の現状を考えれば大なり小なり国と関係がある人でしょうし、そうでなくてもいまや国内でぜいたく品を買って目立つことのリスクは高まっています。どうせなら海外で心置きなく買い物を楽しみたいというのが本音でしょう」

 高額消費をする人々が国内から海外に逃げ出してしまったのは、現代の“整風運動”と評される規律引締めの望まれない副作用といえるのだろう。

 そもそも反腐敗キャンペーンもぜい沢禁止令も狙いは格差から生じる人々の不満を警戒したものだ。経済にダメージがあるとはいえ、急激に二つの手綱を緩めるわけにはいかない事情もある。共産党にとってまさにディレンマともいうべき試練が横たわっていたというわけだ。

「史上最強の特務機関」による厳しい取締り

 だが、実は反腐敗キャンペーンとぜい沢禁止令による副作用の問題はこればかりではない。怒れる大衆を意識して引き締めを強め過ぎた結果として、特権を奪われてしまった巨大な利権組織に属する官僚たちの静かな反攻が始まっているからだ。

 反腐敗には政争の要素もあれば、官僚のモラル改善という意味もある。その使命を担う一つの組織こそ中紀委の下に設けられている中央巡視隊(組)だ。中央巡視隊が設立されたのはもう10年前になるが、休眠状態にあったこの組織を活性させたのが習政権だった。

 「中央巡視隊はいま、習近平の出した『倹約令』に従い、ものすごい勢いで官僚を取り締まっています。最近は、大きな都市を結ぶ高速道路の出口で張っていて、黒塗りの公用車が通ると、それらを片っ端から停めてトランクの中を改めるというやり方が続いていたようです。彼らが強制的に開けさせたトランクには、たいてい高級酒や土産物が大量に見つかります。その品物が誰かから贈られたものか、または誰かに贈ろうとしているのか、いずれにせよ倹約令に違反するものでしょうから、彼らの追求を逃れることはできなくなります。官僚たちはいま、こうした中央巡視隊のことを陰で〝現代の東廠〟と呼び、蔑みながらも恐れているのです」

 東廠とは明代に存在した皇帝直属の特務機関のことで、史上初めて生まれた特務機関ともいわれる。なかでも東廠が有名なのは、与えられていた権限の大きさから、「史上最強の特務機関」として知られている。


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