2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月14日

官僚の“不作為”で80年代に逆戻り?

 だが、官僚側も東廠を恐れているばかりではない。「静かな抵抗はもう始まっている」と語るのは党中央の関係者だ。

 「いま中央政府に持ち上がった新たな悩みは官僚の“不作為”です。不作為とは何もしないことですが、いまの官僚の生活をたとえるならば、『賄賂も贈り物も受け取らない。高級酒も飲まない。宴会もしない。公用車も使わないし海外視察にも行かない。しかし、仕事もしない』というものです。反腐敗キャンペーンに続くぜい沢禁止令で役人の楽しみが奪われ、それがいよいよ本気だと分かった段階から役人たちの側にもそれへの抵抗としてサボタージュが起きているのです。みな、政治学習の名前を借りて一日中『人民日報』を読むふりをしながら新聞に隠して小説を読んでいます。そして早々に帰宅しますから社会の生産効率が上がるはずはありません。これは、とくに地方で顕著になっている現象ですが、中央で頭を痛めているのが経済をあずかる李克強首相なのです」

 まるで80年代の中国に逆戻りしたかのようなやる気のない官僚気質。当然、中央政府はこの現象の広がりを放置するはずはない。

 「今年6月初旬、国務院は督査隊(組)を16の省・市及び27の機関に対し派遣しています。結果はすべて李首相に報告され、それを受けて国務院常務会議を開きました。この席上、李首相は一部の役人たちの間に見られるサボタージュを“新たな腐敗”と位置付けて強く批判しました。一説には机を強く叩く場面も見られたといいますから、よほど怒っていたのでしょう。会議では、李首相の『事を話し合い、策を決めても、それを実行しないのであれば効果があるはずがない』という発言もあったとされます。危機感は強いはずです」(同前)

 中央巡視隊を派遣してモラルを取り締まらなければならないだけでなく、督査隊を送って面従腹背とも戦わなければならないとは驚きである。そして、この現象が中国経済に与える影響は実に深刻だ。もし“不作為”が全国で蔓延すれば、中央が発動するどんな経済政策も途中で骨抜きにされかねない。そんなやっかいな体質を内部にかかえてしまったとすればマクロコントロールは不自由になる。


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