世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月20日

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 オバマは演説で2度もISを「弱体化させ破壊する」と述べたが、軍事面を重視し過ぎである。軍事手段は、勝利のためには不十分である、と論じています。

(出典:“Rethinking Strategy toward the Islamic State”;Jon B. Alterman;CSIS;Sep.17, 2014)http://csis.org/publication/rethinking-strategy-toward-islamic-state

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 この論説は、オバマの対IS戦略が、軍事面を重視し、他の面をおろそかにしていると言っていますが、これは評価の問題で、必ずしも、軍事的手段を過度に重視している戦略とも思えません。むしろ、色々な方策を使おうとしているように見えます。

 例えば、イラクでのスンニ派を冷遇したマリキ首相を退陣させるなど、アルターマンが主張しているような外交手段もとっています。有志連合では、今は、軍事貢献が主な議題になっていますが、穏健イスラム諸国は、過激イスラム主義の正統性の否定を自らの問題として取り組んできた経緯があります。IS対策は、外交、情報、資金の締め上げを含む経済的手段など、包括的なものであるべきという、筆者の意見に賛成ですが、オバマ政権も、そうした方向をとっているのではないかと思います。

 ISは、アルカイダやその系列の諸組織とは異なります。アルカイダなどは、秘密の「細胞」(構成要素となる小組織)を各地に置いたネットワークであり、各「細胞」の所在や中央司令部の所在を突き止めることも困難でした。したがって、攻撃も容易ではありませんでした。しかし、ISは「国家」と称している通り、領域国家を目指し、その萌芽をシリア、イラクの領土内に作っています。ラッカ市を本拠にしており、行政課税もしています。戦闘組織も3万ぐらいの兵士を有する軍事組織で、装備も優れたものを持っています。これは、通常の国家に対するように対応することができますし、そうすべきでしょう。支配領域を狭める軍事的攻勢は、ISの「国家」としての権威を大きく損ない、その求心力も傷つけることになります。対IS戦略は、ISとは何かを考えて立てられるべきでしょう。

  
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