まず野手について、年俸、今季成績、そして補強選手の入団年をまとめたのが表1だ。CSのスタメンを参考にして作成した(阪神のDHは独断で新井良太を選出)。表2の投手編は、先発が予想される4人と中継ぎの中心選手3人、クローザー1人の合計8人ずつを比較対象としている。
野手陣の年俸の合計額に大きな差は見られない。投手陣では阪神の方が高年俸だが、不調にあえぐエース攝津正(年俸4億円)が登板するとなれば一気に逆転する。出場予想選手の年俸対決は五分五分と見ていいだろう。
補強選手の投資効果
だが「過去2年の補強選手」というフィルターをかけると、両チームの強化方針の違いが表れてくる。黄色で示した通り、阪神はこの2年で野手の戦力を厚くし、ソフトバンクは投手を大幅に強化しているのだ。つまり補強選手に限って見れば、西岡剛、ゴメス、福留孝介らの阪神打線と、中田賢一、スタンリッジ、五十嵐亮太、サファテらのソフトバンク投手陣とが火花を散らす構図が浮かび上がるわけだ。
彼らは首脳陣の期待の分だけ年俸も高い。補強戦力がその真価を発揮するのは果たしてどちらのチームなのか? そうした視点でシリーズの行方を見守るのも一興だろう。
レギュラーシーズンの成績に基づいた“投資対効果”を指標に、あえて結果を予想するとどうなるか。ソフトバンクの補強選手たちが年俸に比してまずまずの結果を残しているのに対して、出場24試合に留まった西岡と、104試合に出場して打率2割5分3厘の福留、この阪神の2選手に関しては物足りない成績と言わざるを得ない。
ならば「ソフトバンク有利」と言いたいところだが、シーズン終盤からCSにかけて、情勢は大きく変わりつつある。今季、西岡が欠場続きだったのは、開幕直後3月30日の試合で負った大ケガが原因だった。二塁後方への飛球を追って、右翼手の福留と激しくぶつかったのだ。開幕3試合目で年俸2億円の西岡が戦線離脱を強いられたのはチームにとっては大誤算だったろうが、CSでは本塁打を放つなどついに復活の時が訪れたことをうかがわせた。福留も、広島とのCSファーストステージ第1戦で前田健太から決勝のソロ本塁打を放ち、鋭い読みと勝負強さを随所に発揮している。
メジャー帰りという共通点をもつ2人は「期待はずれ」と批判の槍玉にあがることもしばしばだったが、過去、日本シリーズに複数回出場した実績があり、短期決戦の経験が豊富なのも事実。来日1年目で打点王に輝き、好調を持続するゴメスとともに、“補強打線”爆発への期待は高い。