世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月25日

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 現在の中東の混乱の遠因が、サイクス・ピコ協定、およびバルフォア宣言を含む第一次大戦後の戦後処理、特にオスマン帝国の解体の仕方にある、という説は、かなり有力なものとして受け入れられています。たとえば、ボストン大学のDavid Fromkin教授が書いた“A Peace to end all peaces”という本は、そういう説を、説得力を持って展開しています。余談ながら、同書の題名は、第一次大戦がA war to end all warsと言われたことをもじっています。

 それに対して、このエコノミストの記事は、サイクス・ピコ協定で決められた国境線の問題より、アラブ諸国の統治のあり方に現在の混乱の源があるのではないかと指摘しています。これは、どういう期間や観点で物事をとらえるかによる見方の違いですが、最近のISISとそれに関連した問題は、この記事のように考える方が的を射ているように思われます。

 中東地域は、ユダヤ、トルコ、ペルシャ、アラブの4民族が争ってきた地域と考えることができます。この記事にある国家の崩壊は、アラブ民族の国家の一部で起こっていることであり、イスラエル、トルコ、イランは、国家としてはしっかりしています。アラブの中でもサウジアラビアやモロッコなど、しっかりしているところもあります。従って、混乱は中東全域ではありませんし、アラブの全域でもありません。

 国際秩序の担い手は国家です。国家が破たんした時の無秩序と、それが人々に及ぼす災禍は、極めて大きいものがあります。抑圧機関の強化も場合によっては必要悪かもしれません。しかし、長期的にはそういう国家統治が混乱を導くことになったケースも少なくありません。いずれにせよ、これは外部から介入して是正出来るような問題ではありません。結局は、現地の人の英知に期待するしかないのでしょう。ただ、中東情勢の健全化に役立つことは、外部の勢力もしていく必要があるということでしょう。特に、超大国たる米国は、役割を果たすことが求められます。

  
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