2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2014年11月26日

 4人の若者たちが、現場に居合わせたのには、それぞれがもっともな理由がある。

 野バラ荘の住人である杉下(榮倉)と安藤(賀来)は、死んだ野口夫婦と沖縄のボランティアの旅でスキューバーダイビングを通して親しくなった。将棋が趣味の杉下は、同好の野口(徳井)が安藤と勝負をする際の影の参謀として手を教える関係である。

 この日は、高級レストランで出前のアルバイトをしている成瀬(窪田)の計らいで、野口夫婦と杉下、安藤の4人でその食事を楽しむことになっていた。

 殺人を自供した西崎(小出)は、花屋のバイトとして部屋に花を届ける役割だった。

 元警官の高野(三浦)が納得できないのは、この事件の前に勤務地である島で起きた放火事件とのつながりである。成瀬の父親が経営する料亭が経営不振から売却がきまったわずか後に、放火によって焼失した。

 その現場ちかくに、同級生の杉下と成瀬がたたずんでいたのである。

 どうして、ふたりは事件現場に二度も一緒にいるのだろうか。

キーとなる「劇中小説」

 ドラマはこの放火事件と、野口夫婦の事件、そして西崎が出所してきた現在の3つの時間を織りなすように進行している。

 殺人容疑で10年の刑を終えて出所して西崎は、野バラ荘に戻って大家がそのままにしておいてくれた部屋で暮らすようになる。

 杉下は友人と起業した建築事務所を辞めて、住居も引っ越す。

 安藤は海外勤務を経て、本社に戻ってくる。

 「劇中劇」はドラマのなかで演じられる劇である。「Nのために」では「劇中小説」とも名づけたくなる、作家志望の西崎の習作である「灼熱バード」がキーとなる。

 第6話(11月21日放映)は「灼熱バード」がなにを意味しているのかがわかってくる。西崎が母親によって、タバコの火を体に当てられたり、暴力を振るわれたりした、虐待の体験である。

 そして、杉下を訪ねてきた奈央子(小西)が西崎の部屋で明らかにした夫からの暴力である。奈央子は「灼熱バード」を読んですぐに、西崎が自分と同じ境遇であることを見抜くのだった。


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