2024年4月15日(月)

【緊急特集】エボラ出血熱

2014年11月25日

ファイアストンのゴム農園

 もうひとつ、小林氏がアメリカで注目すべきであるとしたのは、エボラ流行国のリベリアにある「エボラにならない町」。ブリヂストンの子会社、ファイアストンのゴム農園だ。リベリアの首都モンロビアから1時間、エボラ出血熱流行地域の真ん中にある。

 ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、今年3月末、あるエボラ患者がリベリア北部の病院から抜け出し、ファイアストン・ゴム農園に住む夫の家に向かった際には、農園内にある病院で簡単な隔離室を準備し、化学薬品が漏れた際につかう清掃用作業服をエボラ患者用の防護服として活用した。その後も、同農園ではエボラに関する情報収集をし、早期発見や院内感染予防など基本的な感染症対策を徹底させることのみで、医療者や患者の家族へのエボラの二次感染をゼロに抑えてきた(注3)。この農園内で働く従業員は8,500人。その家族は71500人で、農園周辺の医療圏は80000人にのぼる。この間、エボラ患者と濃厚接触のあった医療関係者は17名だ。(10月8日現在)

 エボラ収束に向けてまず必要なのは、新薬やワクチン開発といったものではなく、火の元の西アフリカにおける、ファイアストンのような地道で基本的な感染症対策の積み重ねである。しかし、ファイアストンは、リベリアの他の地域とは全く環境の異なる別天地。農園内には病院や学校はおろか私設の水力発電所まであり、芝生のある庭にレンガ造りの家の立ち並ぶ町並みはアメリカを髣髴させるという。エボラの感染をコントロールできているのは「ファイアストンだから」とう印象は否めない。

 「この際、基本的な医療制度を」というラブコールは、発展途上国を舞台とした感染症の危機によく聞かれる言葉ではあるが、今後も地道で基本的な感染症対策を可能とするための物資や人材の援助は引き続き必要とされることだろう。しかし、大事なのはそれが現場へきちんと届くこと。今回のアウトブレイクでは、資金や物資が国際機関や保健省へ丸投げされるのではなく、各国が軍隊や医療者を別々に送り込んで直接援助を行う傾向が強い。このような直接援助がどの程度有効で迅速であるのかが注目される一方、このような感染症危機における国際機関の役割が改めて問われている。

 11月19日、「シエラレオネでは新規感染者の増加が続いているが、リベリア、ギニアでは感染拡大のペースが鈍化している」としたWHOは、2日後の21日に「3か国すべてで感染は未だ拡大している」とレポートを修正した。日本でのエボラ報道が減ったからといって、エボラ出血熱の流行は安定的に収束に向かっているわけではない。

 少しずつ援助が浸透していく中、MSFをはじめとする海外からの援助スタッフの二次感染の報告もこのところ途絶えている。エボラに罹っても回復した人や、エボラに罹っても発症しない人など、エボラへの免疫力を持つ人がコミュニティの中に広がり、予期せぬ形でも感染拡大にブレーキがかかることを祈りつつ、事態を見守りたい。

注1) Bellan, S. et.al, Ebola control: effect of asymptomatic infection and acquired immunity, Published Online, Lancet, October 14, 2014, http://dx.doi.org/10.1016/ S0140-6736(14)61839-0

注2) Leroy E., et al., Human asymptomatic Ebola infection and strong inflammatory response, Lancet, vol355, June24, 2000.

注3)Control of Ebola Virus Disease — Firestone District, Liberia, 2014、MMWR, October 24, 2014 /63(42);959-965,
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6342a6.htm
https://www.imic.or.jp/library/mmwr/17187/(日本語抄訳)

【修正履歴】
・3ページ「農園周辺の医療圏は8000人にのぼる」の「8000人」を「80000人」に修正いたしました(2014/11/26 11:45)
・1ページ「アメリカのハンバーガーチェーン、「ジャック・イン・ザボックス」」を「ジャック・イン・ザ・ボックス」に修正いたしました(2014/11/26 17:05)
 

  
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