2024年12月7日(土)

田部康喜のTV読本

2014年12月17日

 「ナイル殺人事件」においても、ドラマのシリーズが犯人たちの人生を顧みて、悲劇につながる理由を知るポワロの苦悩がより表現されている。

トリックは古びるが、人生は古びない

 「相棒」はシリーズを重ねてきて、つねにマンネリを打破しようという意欲が衰えずに、ここまで到達している。視聴率競争という目標を遂げようとするのは当然である。

 ここで考えていいのは、世界市場を目指そうということではないのか。「相棒」の製作者たちと主演の水谷豊は、世界の推理ドラマを研究していることがうかがえる。

 このシリーズでも、そうした過去の名ドラマに対するオマージュ(敬愛)に満ちていることを指摘した。そもそも国際的な水準を狙っていこう、という意図を超えてさらに高みを目指すべきだ。

 「名探偵ポワロ」にしても、いまもNHKプレミアムで再放送が続けられている「シャーロック・ホームズの冒険」(ジェレミー・ブレット主演)にしても、観客をひきつけるのは、トリックだけではなく、犯罪にからむ登場人物たちの人生なのである。

 トリックは古びるが、人生は古びない。

1話にどこまで風景を映し込めるか

 世界に観客を獲得しているドラマの魅力はまず、美しい女優たちとベテランの俳優たちの競演である。

 「相棒」の第1話は、警視庁から出向している内閣調査室員に仲間由紀恵を起用している。いうまでもなく日本を代表する女優である。

 「名探偵ポワロ」シリーズの「ホロー荘の殺人」を観ると、殺人事件が起きる屋敷の主人に「シャーロック・ホームズの冒険」のドクター・ワトソン役のエドワード・ハードウィックを見いだせる。その老執事の顔を思い出すまでには、ちょっと時間がかかった。フランスのドゴール大統領の暗殺計画の映画「ジャッカルの日」で殺人犯を演じた、エドワード・フォックスである。


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