2022年12月6日(火)

Inside Russia

2014年12月25日

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 欧州議会議員らへの配布は、「鉄の女への幻想を捨てよ」という警告メッセージだった。ジャーナリストのヤヌッテ氏は、リトアニアメディアの取材でこの出来事を知り、驚愕する。自身はこの謀略にまったく関与していないと言い張った。

 「驚いたわ。本当にあった出来事なの? 誰が配ったの。表紙に私の名があるの?」

 そうして、「これは盗人の仕業」として著作権侵害を訴えた。ヤヌッテ氏は『レッド・ダリア』をロシア語で著し、翻訳はどの出版社にも許可を出していないのだという。

 「英語版を出版しようとも思ったけど、出費がかさむのであきらめたのよ」

 本当だとすれば、この書籍の配布を首謀した“犯人“は相当な労力と資金をつんで、実行に移した可能性がある。ベルレモンビルには特別な許可を持つ人物しかアクセスできない。EU本部の業務に関与する何者かが、750人分の書籍コピーの塊を車両で運び入れ、誰にも気付かれず、メールボックスに配った“犯行形態“が浮かび上がった。紙の束とはいえ、塊は相当の重さだったに違いない。

ロシアは外務省声明でも反論

 2014年3月のプーチン政権によるウクライナ・クリミア半島併合以来、グリバウスカイテ氏は欧州の安全保障が揺らぐとして、ロシアに圧力をかけるべきだと主張してきた。11月にはリトアニアがNATOの加盟国であることをふまえ「我が国は他のNATOメンバーとともに、隣国の挑戦的な態度に相応の対応を取る。われわれは仲間とともに祖国を守る準備が出来ている」と強調した。さらに、米ワシントン・ポスト、英BBCなど欧米メディアの単独インタビューにも相次いで応じ、ロシアは「テロ国家である」として、民衆に理解を求めた。

 鉄の女の言葉の刃に、ロシアは「目には目を」の姿勢で反論した。ロシア外務省のルカシェビッチ報道官は「グリバウスカイテ大統領の主張は度を超えている。キエフの過激国粋主義者よりも激しいものだ」。ナルイシキン下院議長は「リトアニアは美しく、聡明な国だが、ときどき政治家を選び出すのを間違うようだ」

 ソ連時代から、クレムリンのエリートたちは、対立相手を露骨な表現で罵ることはしない。シニカルな表現の中に相手を苛立たせる毒気と、攻撃を加える鋭い針を忍ばせる。露外務省声明にはこうも盛り込まれた。

 「彼女はソ連時代の過去にコンプレックスをもっているようだ。コムソモールの熱い頭を冷ますことをお勧めする」

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