2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月3日

 この最後の点は重要である。中国は歴史的な成果を達成したが、超大国になるのが必然ではない。中国の政治、経済モデルがあまり魅力がないことはさておき、中国は安い労働力の供給者から付加価値とサービスの経済への移行、対GDP比で世界最大の債務の削減、公害と汚職の削減、競争力が不十分な国営企業への対処、その他の数多くの国内問題との取り組み、といった課題に直面している。ブルッキングス研究所のDavid Dollar研究員は、中国は20年以内にGDPの絶対値で米国を抜くかもしれないが、中国の専制政治が続く場合は、今世紀中に米国が再び世界一に返り咲くかもしれない、と述べている。

 もちろん米国がなすべきことは多々ある。移民法の包括的改正、教育制度の見直しが必要である。中産層、低所得層の実質賃金は大不況以来ほとんど上がっていない。犯罪は西側の基準からいえばまだ高い。給付金の見直しや税制改正が行われなければ、5年以内に財政赤字は再び悪化するだろう。さらに将来の生産性向上に重要なインフラは大幅に改善する必要がある。そしてもちろん、気候変動やイスラム過激派、イラン、ロシアの脅威がある。

 しかし、米国はどの国よりも、そしておそらく歴史上のどの国よりも、課題に正面から取り組むための資産を持っている。

 共和党と民主党は、いろいろな問題で異なっていても、一つの命題については同意すべきである。命題とは21世紀は再び米国の世紀であり、将来がこれほど明るかったことはまずない、というものである。ワシントンの政策立案者たちは、いくつかの政策について、妥当で中程度の妥協をすることが必要である、と述べています。

出典:David H. Petraeus & Michael O’Hanlon  ‘America on the way up’(Washington Post, January 30, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/david-petraeus-and-michael-ohanlon-america-on-the-way-up/2015/01/30/8c7cd83e-a73e-11e4-a7c2-03d37af98440_story.html

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 米国衰退論に対する強烈な反論です。21世紀は再び米国の世紀であり、将来はかつてないほど明るいと言いきっています。

 この楽観論には根拠があります。技術革新で世界をリードしているのに加え、米国が今や世界最大の石油、天然ガスの生産国であること、人口が年1%着実に増加していることは、大きな楽観要因です。


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