エコノミスト誌1月17-23日号は、世界的なエネルギー価格の大幅な下落と新技術の発達のおかげで、エネルギー政策を合理化する千載一遇のチャンスが来たとする論説を掲載しています。
すなわち、安価でクリーンなエネルギーの安定供給が実現可能になってきたかもしれない。楽観論を支える一番の根拠は、エネルギーコストの低下だ。原油価格はこの半年で半額になり、天然ガスもここ10年の最安値を記録、クリーンエネルギーの価格も下がっている。しかも、この安値は定着しそうだ。
新技術によってエネルギー、特に電力の消費の管理が容易になってきたことは、無駄の排除と更なるコストダウンに繋がる。これまではエネルギーを十分生産できるかどうかが世界の課題だったが、今後は、豊富なエネルギーをどう管理するかが課題になるだろう。
しかし、多くの国は未だに供給への懸念に基づく不合理なエネルギー政策を続けている。米国は、原油の輸出禁止を続け、バイオエタノール用トウモロコシ生産農家への補助を止めず、原発への巨額の助成も見直そうとしない。ドイツは拙速に原発を廃止し、米国の石炭とロシアのガスへの需要を増加させている。
最もシンプルで直截な改革は、化石燃料の生産・消費への補助を止めることだ。昨年だけで世界は石油の価格抑制や探査に5500億ドルもの無駄なカネを使っている。エネルギー価格の低下は、こうした不合理を見直す契機になるだろう。インドやインドネシアは石油への補助金を撤廃し始めたが、多くの産油国は国内の石油価格を安く抑え、富裕国も石油ガス企業への補助を止めていない。これらは全て廃止すべきだ。
改革のもう一つの軸は、企業や消費者にクリーンエネルギーの使用を促す、炭素税の導入だ。炭素税の政治的コストも、エネルギー価格の低下に連れて下がってきている。CO2排出抑制の方策として、炭素税は、原発や風力発電への助成よりもはるかに効果的である。
さらに、各国政府は、途切れのないエネルギー供給を確保するために、エネルギー投資に関わる不当な障害を取り除き、世界市場の成長を促すべきだろう。