11月12日にオバマ大統領と習近平主席が、米中の温室効果ガス排出削減目標について合意し、発表した。米国は05年比25年までに温室効果ガスを26%から28%削減し、中国は30年までに二酸化炭素(CO2)の排出をピークとし、再生可能エネルギーと原子力の比率を20%にする目標を掲げた。
ホワイトハウスは無論のこと、民主党系米メディアは、温室効果ガス排出量1位と2位の中国と米国両国が目標を設定したことを評価しているが、共和党系メディアは、「中国は16年間何もしなくて良いということだ。米国のエネルギーコスト上昇は家庭にも大きな影響がある」と目標設定を非難している。
評価は分かれているが、この両国の声明の背後には米中の同じ動きがある。石炭離れだ。中国は、発電の80%を石炭で賄っている。米国はシェール革命のおかげで、石炭から天然ガスへの燃料転換が進み、石炭火力の比率は減少したが、それでも40%を石炭火力に依存している。化石燃料のなかで、CO2を最も排出する石炭の消費量を削減したいというのが、オバマ大統領と習主席共通の思いだ。中国の石炭離れは、日本の安全保障にも影響を与えるが、世界一の石炭輸入国の中国が石炭離れをし、輸入量を減らしても、日本が石炭を買いやすくなり、石炭の輸入価格が下がるメリットがあるということでもなさそうだ。
欧州でも進む石炭離れ
中国も米国も、その理由は異なるが、既に石炭離れを始めている。中国が石炭離れを始めた理由は、温暖化対策よりも、昨年から大きな問題となっているPM2.5、PM10対策が最大の理由だ。石炭消費量を抑制すれば、CO2の排出も抑えられ、温暖化、気候変動対策が進む。
オバマ大統領は発電部門からのCO2削減策を既に発表している。米国国内には、石炭消費削減に反対する大きな声があり、オバマ大統領の目指す削減策が実行されるか疑問もあるが、産業規模、雇用面からは、石炭よりシェールガス、オイルを推進するほうが、米国経済にはメリットをもたらす。
石炭離れは、欧州でも起こっている。風力発電で有名なデンマークでは、発電の40%が再生可能エネルギーの発電設備からになったが、残りの発電の大部分、55%は石炭火力が供給を担っている。コストが高い再エネが増加すれば、電気料金の上昇を抑えるためには、コストが相対的に安い石炭火力を利用せざるを得ない事情がある。1次エネルギーの中でも石炭は20%のシェアを持っているが、デンマークのピータセン環境大臣は、温暖化問題に対処するために2025年までに石炭の全廃を検討すると10月末に発言している。