2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2014年11月19日

温暖化問題に対する共和、民主両党支持者の温度差

 ケンタッキー州選出の上院共和党院内総務のマコーネル議員は、今回の合意を次のように批判している「中国は16年間何も行わなくて良いということだ。米国ではケンタッキー州のように国中が大損することになる」。さらに、次期上院環境・公共事業委員長と言われている共和党のインハーフ議員は「合意は不公平だし、中国が再エネと原子力を20%にするというのは信じられない。米国は削減を強いられるが、中国は何もしなくていい」と批判している。

 共和党支持者には、温暖化は起こっていないとする温暖化懐疑論者が多いことも共和党議員が反対する理由だろう。CNNによると中間選挙の際の出口調査では、温暖化、気候変動が重要な問題と答えた有権者が57%、そうではないとの答えが41%だった。しかし、民主党支持者では問題と答えた有権者が70%、共和党は29%と大きな差がある。

 共和党議員に加え、産炭州出身の民主党議員も合意に反対の立場であり、環境保護庁が規制案を作ることができるのか、見通しははっきりしない。現在議論されている既存発電所からの排出規制と同様に各州の権限に委ねると、多数を占める共和党知事が具体案を作成しないまま16年の大統領選となり、新大統領如何では、結局合意は実行されない可能性もある。

日本への影響は?

 15年末にパリで開催される気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、温室効果ガスの排出を抑制する新たな合意が期待されている。中国が排出抑制の意思を示したことは評価されるが、その実効性には疑問がある。また、オバマ政権が残り2年で、削減のための米国の制度を整えられる可能性は少なく、今回の合意は葬り去られる可能性も高い。

 エネルギー政策が、まだ決まらない日本が削減目標を出せるはずもないが、今は主要国の温暖化政策が日本に与える影響に注目すべきだ。中国は、低品位炭の輸入を禁止し、今後高品位炭の購買量が増えるだろう。日本の電力会社は高品位炭を中心にボイラーの設計を行っており、中国と高品位炭の購買を巡り競争する場面も増える可能性がある。

 米国で既存発電所からのCO2排出規制が実行に移されれば、石炭火力から天然ガス火力への燃料転換が増加することが考えられる。欧州と日本が期待する米国からのシェールガス輸出量にも影響を与える話だ。

 また、米中環境協力により、エネルギー・環境技術の協力がさらに進む可能性がある。日本の技術を利用し途上国で温室効果ガス削減に協力するというのが、日本の方針の一つだが、うかうかしていると日本の技術が陳腐化するということを忘れてはいけない。デフレの時代に欧米が日本に差をつけた技術もある。

  
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