米国の削減目標設定の裏側
オバマ大統領の1期目に、議会で温室効果ガスの排出量取引制度の導入が検討されたが結局廃案となった。議会の協力を得ることの難しさを認識した大統領は、環境保護庁の権限で発電所からのCO2の排出量を抑制する方策を採用した。今回の目標達成の方策も議会に諮ることなく、環境保護庁の権限で進められるだろう。
13年9月には、1kW時当たり800グラム以上ある石炭火力発電所からのCO2排出量を、天然ガス火力並の499グラムに抑えるという、新規発電所に関する規制値を発表した。CO2の補足貯留装置(CCS)を設置しない限り達成は無理な規制だった。
今年の6月には既存の火力発電所からの規制値を環境保護庁は発表した。大気浄化法に基づき既設の発電所からのCO2の排出を削減する案だ。05年との比較で30年に火力発電所からの排出量を30%削減することが全米の目標とされ、州毎に目標値が割り振られた。州毎に異なる目標が設定されたのは、発電所の構成が異なるためだ。石炭火力の比率が高い産炭州には比較的低い目標値が設定された。
表の通り、産炭州のウエスト・バージニア、ケンタッキー、ワイオミング州では石炭火力が主体のために排出量は多いが、目標の削減比率は非産炭州のニューヨーク、カリフォルニア州より低く設定されている。石炭産業に大きな影響を与えないようにとの考えだろうが、それでも石炭火力から天然ガス火力などへの転換が必要になる。この目標値については、現在パブリックコメントが受け付けられており、15年6月に最終的な規制値が発表される予定だ。それを受け各州政府が達成のための具体策を16年6月までに定めることになっている。
05年が基準年に選定されたのには理由がある。過去最大の排出量の年なのだ。それから、排出量は減少を続け12年時点で既に15.8%減少しているのだ。30%の目標値の半分以上達成済みであり、それほど達成は難しくない可能性はあるが、石炭産業には大きな影響がありそうだ。
新目標値は25年に26%から28%であり、30年に30%の火力発電所を対象とした削減目標と大きな違いはない。現在の制度の延長で対処可能とオバマ政権は考えている可能性があるが、米国内では共和党を中心に反対の声が大きくなってきた。