2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月23日

 これらは、野心的な課題だが、実行すれば、よりクリーンで効率的なエネルギーの未来が開かれる、と述べています。

出典:‘Seize the day’(Economist, January 17-23, 2015)
http://www.economist.com/news/leaders/21639501-fall-price-oil-and-gas-provides-once-generation-opportunity-fix-bad

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 論説は、石油、ガス価格の大幅な下落と、新技術によってエネルギーの管理が容易になって来たことにより、現在の誤ったエネルギー政策を正す「一世代に一度の機会」が訪れており、これまでの供給への懸念に基づく非合理的なエネルギー政策を改めるべきである、と提言しています。補助金に頼らず市場の原理に任せたエネルギー供給を目指すことは正しい方向性であり、良い問題提起をしているといえます。欧州や日本で再生可能エネルギーへの補助金政策の失敗が明らかになり、インドやインドネシアが石油への補助金の撤廃に動くなど、エネルギーに対する補助金が見直される兆しが見られます。

 ただ、論説には、エネルギー価格と地政学が相互に作用し合うものであるという視点が希薄であるように思います。何よりも、議論の大前提である原油価格の下落が、論説の言うように不可避的なものと考えられるかどうかという問題があります。原油の価格は歴史的に、需給構造のほかに地政学的要因に大きく影響されてきました。第一次石油ショックをもたらしたOPECの石油戦略の引き金は第4次中東戦争であり、第二次石油ショックの原因はホメイニ革命でした。今後も地政学的要因で原油価格が上昇する可能性は排除できません。

 環境政策論としては、エネルギー価格の低下により炭素税導入の政治的コストが低下しているとは必ずしも言い切れません。炭素税の本来の趣旨は、CO2を削減するコストと炭素税負担を比較して、後者が前者を上回れば、企業であれ個人であれCO2削減を選択するはずである、というものです。クリーンエネルギーの価格も低下しているようですが、石油・ガス価格低落時に炭素税を導入するならば、炭素税率をかなり高くしなければ効果が上がらない可能性があります。

  
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