2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月3日

 中国の挑戦については、中国は数多くの課題を抱え、GDPで米国を抜いても、米国が再び抜き返す可能性があると言っています。

 米国も多くの課題を抱えていますが、米国はどの国よりも、そしておそらく歴史上のどの国よりも、課題に正面から取り組むための資産を持っている、と言います。

 困難を克服する米国の底力です。米国衰退論はこれまで何度も論じられてきました。ベトナム戦争後がそうでありましたし、1980年代後半には日本の経済的脅威を受けて論じられ、その都度米国は再生しました。今度こそ米国の衰退は不可避である、イラクとアフガニスタンの2つの戦争で国力は疲弊し、その間中国の台頭があって、米国の世紀は終わったとの議論が幅広く行われていますが、論説は、米国は当面の困難を克服するのみならず、将来はかつてないほど明るいと言っています。

 ただ一つ論説が懸念しているのが民主、共和両党の対立です。論説は、「政治指導者が重要な問題につき、いくつかの賢明で、それほど困難でない妥協をすれば将来は明るい」、「ワシントンの政策立案者たちは、いくつかの政策について、妥当で中程度の妥協をすることが必要である」と述べています。両党が一定の妥協をすればいい、と言っています。これは、現状では、それほど困難でない妥協、妥当で中程度の妥協をすることすらいかに困難であるかを示しています。

 論説の懸念はもっともです。米経済のファンダメンタルズは良く、明るい将来が期待できるのに、ワシントンで政治機能が不全に陥れば、経済の発展の足を大きく引っ張ります。米国の将来を左右するのは、国力そのものではなく、統治の問題のようです。

  
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