2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月4日

 朝鮮半島で高まる大量破壊兵器の脅威に対して、日米韓の軍事協力を促進するには、C4I(指揮・統制・通信・コンピュータ)システムと明確な交戦規定(ROE)が不可欠である。新しい三国間の覚書が成功するには、情報と戦術的データのリアルタイムでの交換に基づく、共通の作戦計画、事態対応計画の構築が必要である、と述べています。

出典:Sukjoon Yoon,‘A trilateral intelligence sharing accord between Japan, Korea and the United States: implications and challenges’(Pacific Forum CSIS, January 22, 2015)
URL:http://csis.org/publication/pacnet-6a-trilateral-intelligence-sharing-accord-between-japan-korea-and-united-states-i

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 ユン・スクジュンは、韓国海軍の退役大佐である他、韓国海洋戦略研究所主任研究員、世宗大学防衛システム工学客員教授を務めており、韓国の防衛政策に一定の発言力を持つ人物と思われます。論説は、歴史問題や竹島問題で日本を批判しながらも、日米韓での軍事協力を促進すべきであるとして、日米韓三国間で、北朝鮮の核とミサイルについての情報を共有し、アドホックな指揮・統制システムを創設することが合意されたことに肯定的評価を下しています。

 本来、日韓間では、2012年にGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の締結が合意されていましたが、韓国世論の反対を受けて、それが実現していないという経緯があります。GSOMIAに代わる限定的な軍事情報協定が締結されたことは、北朝鮮の核とミサイルの脅威を考えれば当然のことです。それがニュースになるのは、そもそも韓国内には日本との軍事協力に反対する強い世論がある上に、日韓関係が冷え込んでいるからです。今回の三カ国合意は、北朝鮮に関する情報の共有に限られるとはいえ、日韓が軍事協力に前向きになったことに意義があります。

 他方、論説は、韓国が、日米韓の軍事協力を対北朝鮮に限定し、中国に強く配慮していることも示唆しています。今回の合意は、北朝鮮対策を越えて、いずれ韓国を米主導のミサイル防衛システム(MD)に参加させることにつながるとの議論を中韓で引き起こしましたが、韓国は、北のミサイルに対抗するためには韓国独自のMDで十分である、と言っているようです。その背景として米主導のMDに参加するためには、情報・監視・偵察能力向上のため多額の財政支出が必要となる、という事情があるようですが、中国が米主導のMDへの韓国の参加に反対していることも理由の一つであると言われています。もし韓国が、中国が反対しているために米主導のMDへの参加を躊躇しているのであるとすれば、韓国の安全保障政策が中国に影響されていることを意味します。最近、韓国と中国の接近が目立ちますが、それが歴史問題での対日姿勢での協調、経済関係の緊密化を越えて、朝鮮半島をめぐる安全保障政策にまで及ぶとすれば、見逃せない状況であり、今後の中韓関係の進展を注視していかなければなりません。

  
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