Wedge REPORT

2014年11月1日

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事実として進む「一括金」化

 「初めから一括金で良かった」

 避難期間と賠償金が結びつくと、住民の生活再建への意思決定を遅らせるのではないか。帰還だけを前提にした設計も住民を縛りつけることになる。そう考えた取材班は、「帰還か移住かによらず、ある程度のまとまった資金を一括で支払う」方式への変更はどうかと避難者に尋ねて回った。すると、こんな反応が最も多かったのである。

 実は、賠償基準もその方向に変わっていっている。原子力損害賠償紛争審査会が13年12月に示した中間指針の第4次追補では、帰宅困難区域と双葉町・大熊町全域に対して、新たに長期間帰還不能になったことによる精神的損害への賠償が追加された。さらに3区域全体に、住宅確保に伴う損害への賠償が新設された。

 前者は実際の避難指示解除がいつかという視点を離れ、一括で1人700万円の追加賠償を行うものだ。従来設定されていた精神的損害への賠償とつなげると、事故後約14年半の間、月10万円を支払ったのと同等になる。

 後者は、時価を基にした従来の不動産賠償だと、とくに築年数が古く、減価償却が進んだ建物の場合、新たに住宅を確保すると資金が足りないという批判に応えるもので、元の住宅の新築価格の8~10割を賠償するという内容だ。どんなに古い家でも新築時の最低8割は賠償されるため、移住の決断もしやすくなるし、帰還の場合でも大規模な修繕や建替が可能になる。

 7月末からの受付開始で、説明会も9月に始まったばかりだから、地元ではまだ浸透していないが、これで住宅という生活再建の第一歩がやっと前進することになるだろう。

 残るは、居住制限地域、避難指示解除準備区域の精神的損害への賠償(月10万円)の終期をどうするかである。避難解除時期とリンクさせたままにしておくと、現在設定している事故後5年、事故後4年という解除見込を、さらに後ろ倒ししようとする力が働くだろう。帰宅困難区域の700万円の追加賠償との不公平もこれから問題になってくる。

 金額は別にして、これについても一括金化し、賠償に区切りをつけることが、住民の生活再建という観点に立っても、町の復興という観点においても適切なのではないだろうか。

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