2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月15日

 インド洋で行動する海軍力を持ってきた中国は、今やインドの海洋隣国となった。インドはこの潜在的な脅威を無視してはならない、と警告しています。

出典:P. K. Ghosh ‘Chinese Nuclear Subs in the Indian Ocean’ (Diplomat, April 12, 2015)
http://thediplomat.com/2015/04/chinese-nuclear-subs-in-the-indian-ocean/

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 この事例は、増強する中国の海軍力の行動範囲が拡大していることを示しています。中国は、潜水艦や対潜水艦能力の向上を図っていると言われます。冷戦時代には米ソの間で潜水艦を巡って激しい競争と対立が続きました。潜水艦は、残存性の高い、重要な戦力です。米海軍のムロイ中将は、2月25日の米下院軍事委員会で証言し、中国海軍の潜水艦の数が米軍を上回ったとの見方を示したと言います。

 中国から見れば石油輸送ルートの安全確保ということもあるのでしょうが、中国原潜のアデン沖への配備はインドに強い危機感を引き起こしているようです。ちなみに、著者のゴーシュはインド海軍の退役軍人です。インドと中国は海洋隣国となったというゴーシュの言葉が印象的です。中国潜水艦の増強と活動の拡大は、日本を含むアジア太平洋にも直接関係する重要事項で、日米印豪等の協力が求められる所以です。

 この事例で更に注目すべきことは、短期的配備ではありますが、アデン沖の海賊対処部隊の一部として組み込むことによって、原潜の遠方展開を行っていることです。中国は、PKO参加などを通じて、軍事力の遠方展開について習熟を積み重ねています。国連安保理常任理事国のPKO派遣が歓迎されるようになったのは、冷戦終了後のことですが、今年の2月末現在、中国は2370名を派遣しています。因みに日本は272名です。中国が大いなる自信を持ち、「大国外交」を強く進めようとしていることは明白です。その際、増強を続ける中国の軍事力について、中国側は、それは中国の防衛だけではなく、PKOや海賊対処への参加などを通じて世界の平和に貢献し、世界の期待に応えるものでもある旨述べています。しかし、専門家が兵力の内容、武器の種類を見てみますと、上記ゴーシュが指摘するように、やはり勢力拡大、海洋進出の要素が強いようです。

  
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