2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月15日

 4月12日付のDiplomat誌で、インドのObserver Research財団の上席研究員であるゴーシュが、先頃、アデン沖の海賊対処の中国部隊に原潜が配備されたことを紹介し、これは海賊対処というよりも、むしろ将来のインド洋海域への展開に向けた動きである、と警告しています。

画像:istock

 すなわち、中国がアデン湾沖の海賊対処部隊の一部として原潜を配備したことは、インド海軍に強い警戒感を与えた。これは極めて大きな戦略的な意味合いを持つ動きである。

 潜水艦は海賊対策には適さない。速度の遅い潜水艦では海賊の高速で動く小舟を追跡できないし、魚雷で攻撃できるものでもなく、潜水艦は海賊対策には不必要なものだ。更に、海賊行為は減少し、関係国はプレゼンスを縮小しているのに対し、中国は、逆に増強している。

 2014年12月13日から2015年2月14日までの中国原潜の配備の意図については、種々の疑問がある。インド海軍は、中国がインドの西部海域で水路調査を行っていた可能性があると言う。

 中国の意図については次のようなことが考えうる。

 (1)中国が、海賊対処を隠れ蓑に使い、艦船をインドの裏庭などの遠い水域で長期にわたって作戦行動させていることはよく知られている。更に、日本の海上自衛隊とインド海軍との協力を通じて日、印の能力を評価することができる。

 (2)今回の原潜配備は特にインドに対し戦略的メッセージを送った。中国海軍は7カ月という長期にわたって遠方海域で行動できる投射能力を持ってきている。

 (3)従来型原潜の行動は沿岸部に限られたが、技術進化したシャン級やジン級原潜は、技術水準の高いもので、今回の配備は、外洋海軍としての展開能力などを持っていることを再確認させるものとなった。

 (4)中国は、インド洋での頻繁な行動を通じて当該水域の状況を把握することによって、今後の潜水艦のインド洋配備を容易にすることができる。

 (5)他国が海賊対処派遣部隊を縮小しようとする中で、中国が部隊を維持、増強する背景には、将来の展開に備えて、艦船、潜水艦、要員の習熟を図っていることがある。将来、中国の潜水艦がベンガル湾やアラビア海、あるいはインド沖のチョーク・ポイントでインド海軍を待ち伏せし敵対行動をとるといったことは考えられないことではない。


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