アジア専門家のマルコム・クックが、豪戦略政策研究所(ASPI)のブログ「Strategist」に4月29日付で寄稿した論説の中で、新日米ガイドラインを評価するとともに、豪州や東南アジアもこれを活用する形で、より積極的な対米協力の素地を作り、米国のリバランスに貢献すべきだ、と述べています。
すなわち、米国のリバランスは、東アジアに対する米国の前方展開を強化するという一方的なコミットメントだけではなく、同盟国や拡大する安全保障パートナーが米国に対する更なる支援を提供するという相互的な関係によって成り立つ。
北東アジアにおいて日本は、新ガイドラインにあるように、自国の防衛以外にも、第三国における危機や弾道ミサイル防衛、地域における能力構築などで貢献する機会を掴んだ。
東南アジアを広く捉えれば、豪州も、米海兵隊のダーウィンへの展開やスターリング海軍基地へのアクセス拡大といった形で、米国が地域安全保障に果たす役割を手助けする機会を得ている。また、シンガポールは米海軍のLCS(沿海域戦闘艦)の母港を提供しているし、フィリピンは昨年、米比拡大防衛協力協定(EDCA)を締結している。
ただ、新ガイドラインでは、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であることが改めて明記されたが、フィリピンが領有権を主張している南シナ海の島嶼においては、米国のコミットメントを示すものはない。この点、米国の北東アジアに対するコミットメントは、東南アジアのそれよりも、遥かに深いと言える。
また、今次ガイドラインで定められた同盟調整メカニズムや、民間空港・港湾の共同調査、弾道ミサイル防衛向上のための協力は、日米同盟をより深く、広範なものにしている。他方、2014年に行われたAUSMIN(米豪「2+2」)では、豪州の地域における弾道ミサイル防衛に対する潜在的協力オプションを検討するための作業部会を設置するにとどまっている。これは、日米同盟が米豪同盟よりもいかに深化しているかを反映するものである。
こうした動きの背景には、「日本の軍」の拡大の他、中国や北朝鮮と隣接するという地理的状況も影響していようが、米軍の戦力配備は明らかに北東アジアに傾斜しており、今後もこの傾向は続くであろう。
フィリピンについて言えば、2016年の選挙次第では、中国との領土紛争に関する同国の政策が一変する可能性があり、一部では最高裁がEDCAを無効とする判決を下すのではないかと懸念されている。そうなれば、フィリピンにおけるリバランスは未完に終わる。