新ガイドラインは、3カ国や多国間協力の重要性を強調している。豪州はこの強力なガイドラインを活用すべく、日本との関係や機能的な3カ国協力の強化を続け、地域の弾道ミサイル防衛に対するコミットメントをより明確にすべきである。これは、東南アジアに対するリバランスを強化することにも資するはずである、と論じています。
出典:Malcolm Cook,‘US-Japan defence guidelines: pushing the rebalance’(ASPI Strategist, April 29, 2015)
http://www.aspistrategist.org.au/us-japan-defence-guidelines-pushing-the-rebalance/
* * *
筆者は、シンガポール東南アジア研究所上席研究員、豪ロウィー研究所客員研究員を務めている、アジア専門家です。この論説では、米国のアジアへのリバランスは、アジアへの米国のコミットメントを意味するだけではなく、同盟国や増加する安全保障パートナーに、米国に対するさらなる支援をする機会を提供するものであり、新日米ガイドラインは、日本がその機会を捉え、日本の防衛のみならず、地域の安全保障の支援を強化しようとするものである、として新ガイドラインを高く評価しています。
論説は、米国の北東アジアに対するコミットメントが、東南アジアに対するものより遥かに深く、日米同盟は米豪同盟より深化している点を指摘し、豪州は、3カ国や多国間協力の重要性を指摘している新ガイドラインを活用し、東南アジアに対するリバランスの強化に努めるべきである、と述べています。豪州のこのような積極姿勢は、米国、そして日本の歓迎すべきところであり、評価されるべきでしょう。
日米同盟が米豪同盟より深化しているというのは、確かに事実ですが、豪州は、9.11の同時多発テロ事件を受け、米豪同盟に基づき集団的自衛権を発動し、2001年10月以降、米軍の作戦支援のため、官邸、空中給油機、戦闘機、陸軍特殊部隊などを派遣しています。また、イラク戦争に際しては陸海空合わせて約2000人の兵力を派遣しています。これらは日本以上の軍事的貢献であり、歴史的には豪州が米豪同盟に基づき、米国を支援してきたことを忘れるべきではありません。
ただ、豪州には中国との経済関係を重視すべきであるとの見解もあること、また、豪州では二大政党間での政権交代が比較的頻繁に行われ、政権によって米豪同盟への見方が変わる可能性が常にあることは留意すべきです。
論説は、フィリピンの対米協力には不確定要素があることを指摘しています。フィリピンは東南アジアの安全保障環境で重要な国であり、今後のフィリピンの政治、司法の動きを注視する必要があります。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。