2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月5日

 皮肉にも、中国を排除した勢力圏を築いて中国を阻止しようとベトナムで戦った米国は、この戦争のために中国に対して門戸を開かざるを得なくなり、以後、中国の台頭を助け、それがあまりにも成功したために、今や中国が米国を排除した勢力圏を築く恐れが出てきている、と述べています。

出典:‘Forty years on’(Economist, April 25-May 1, 2015)
http://www.economist.com/news/asia/21649515-strategic-order-place-asia-vietnam-war-being-challenged-forty-years

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 この論説は、国際情勢がいかに思わざる方向に変化するかをベトナム戦争終結後の40年を題材にアジアについて描写したもので、よい論説です。

 ベトナム戦争での敗北がアジアからの米の撤退につながるとの予測が多かったが、全くそうではなく、対ソ対抗のための米中関係の改善などで、米主導秩序の強固さを示した、との指摘はその通りでしょう。その秩序のなかで、中国は急速な経済成長を遂げ、今、その中国がその秩序に挑戦する存在になっているというのも、その通りでしょう。

 中国は、日米安全保障条約を米中、日中正常化のころには明確に支持していましたが、今は冷戦時代の遺物として非難しています。

 確かに中国との関係は重要ですが、日米同盟と中国との関係のいずれが大切かと言えば、明らかに日米同盟です。この40年の中国を見ていると、中国は信用できないと言わざるを得ません。日米安保への態度の変化があったほか、北方領土問題について日本支持からロシア支持に態度を変更したり、覇権主義反対から大国外交に転換するなど、態度が変わりすぎています。民主国家では政権交代の結果、政策が変わることがあるが、中国の場合はずっと共産党支配です。こういう国と信頼に基づく関係を作ることは難しいでしょう。今後もどう変わるか、わかりません。革命的な変化さえ起きうる国です。

 安倍総理の訪米は成功裏に行われましたが、中国の台頭がある中、日米同盟の強固さを誇示し得たことは、今後の40年のアジア情勢に希望を持たせてくれます。

 国際情勢を見通すことは、この記事にあるように簡単ではありません。情勢変化に敏感であること、変にイデオロギーにとらわれないこと、冷静であることなどが大切なのでしょう。

  
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