チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年6月3日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

「近海防御」と「遠海保護」
海軍運用の二分化

 中国では、一部のグループに不満をためないように、バランスをとりながら変革を進めるのが普通だ。「4 軍事力量建設発展」でも、陸軍、海軍、空軍、第二砲兵、武警それぞれについて、戦略の変化が述べられている。しかし、明らかな活動範囲の拡大を示しているのは、海軍と空軍である。

 海軍は、「『近海防御』から『近海防御と遠海保護の結合型』への転換」が求められている。近海防御は、1980年代から、中国海軍の父とも呼ばれる劉華清が指示してきたものだ。

 近海とは、第一列島線内外までの海域を指している。西太平洋の一部も含まれる。中国の本土防衛に直接関わる部分だ。

 一方の遠海保護は、中国の経済活動の拡大に伴って、社会経済の発展を保障するために、世界規模で戦略的任務を遂行するものである。こちらは、主として、軍事プレゼンスによるものだ。すでに、中国海軍は、ソマリア沖アデン湾において、海賊対処活動に参加し、これを足掛かりに、ヨーロッパ諸国に親善訪問を実施し、地中海において中ロ海軍共同演習も実施している。

 海軍運用の二分化が、国防白書にも明記された形である。中国の本土防衛とともに世界各地に空母戦闘群を展開するために、引き続き、多くの予算が配分されることになる。ちなみに、米海軍では空母戦闘群と呼ぶのを止め、空母打撃群と呼んでいるが、中国では一般的に空母戦闘群という呼称が用いられている。

海軍ともに活動範囲の拡大が明記される空軍
国土防空から攻防兼備へ

 国防白書の中で、海軍とともに、活動範囲の拡大が明記されているのが空軍である。空軍は、国土防空型から攻防兼備型への転換が求められている。また、空軍がカバーする範囲が、空中と宇宙を一体化した範囲であると明記された。2013年国防白書では、空軍は「空中作戦行動の主体」であるとされている。2014年4月に、習近平主席が空軍に対して行った講話の中の、「空軍は、空中及び宇宙における戦闘力を向上させなければならない」という指示が反映されているのだ。

 ところで、「攻防兼備」の「攻」は、現段階では、必ずしも、米国本土を攻撃する能力を含んでいない。国防白書の中で、空挺作戦能力や戦略的兵力輸送能力の向上が指示されているが、輸送されて陸上戦闘を展開する陸軍に関する記述の中に、それだけの能力が含まれていないのだ。

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