チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年6月3日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 「未曽有の大変局」をもたらしているのが、「中国の台頭」である。その上で、中国がさらに発展するために、現在の人民解放軍の活動が重要であると言っているのだ。

 「1 安全保障環境」の中にも、中国の自信を見て取れる。最初に国際社会全体の状況を述べる中で、2013年は「経済のグローバル化、多極化」の順番であったものが、2015年は順番が入れ替わり、「多極化」が「経済のグローバル化」より先に来ている。

 中国もロシアも、「多極化」という表現を、米国一極型の国際社会に対抗するものとして使用する。2015年5月9日にモスクワで実施された、第2次大戦の対ドイツ戦勝70周年記念式典において、プーチン大統領が「一極支配の試みがみられる」と米国を批判したのは記憶に新しい。この軍事パレードでは、中国の習近平主席がプーチン大統領の隣に座り、中ロ蜜月を強調して見せた。

陸主海従からの脱却 
拡大する中国海軍の活動

 この自信を基にして、中国軍の活動範囲及び機能等の拡大を示すのである。中でも目を引くのが、海軍の重視だ。「3 積極防御戦略の方針」の中で、「戦争の形態の変化および国家安全保障情勢に基づき…海上軍事闘争および闘争準備を最優先にし…」と述べ、「4 軍事力量建設発展」では、「伝統的な陸重視・海軽視の考え方を突破し、海洋に関する経済戦略と海洋権益の保護を高度に重視しなければならない」とまで述べている。

 元々、中国人民解放軍は陸軍である。中国の海軍、空軍、第二砲兵は、陸軍の一部という位置づけなのだ。軍の編成はこの事実をよく表している。海軍、空軍、第二砲兵のトップである司令員は、人民解放軍(陸軍)の7大軍区の司令員と同格なのだ。人民解放軍には、陸軍司令員という職は存在しない。

 しかし、陸重視から海重視へのシフトは、急激に起こっている訳ではない。実は、海空軍重視は、胡錦濤元主席も進めてきたものだ。2004年9月の第16期四中全会において、海軍、空軍及び第二砲兵の司令員が、初めて中央軍事委員に選出されたのはその一例である。海空軍重視の具現化は、軍内の反応を見ながら、少しずつ進められている。

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