――何故、競合の可能性がないと言えるのでしょうか?
カラガノフ:プロジェクトの共通部分が合理的に組み立てられているならば、それは双方にとっての利益となる。たとえば米国と欧州連合の関係には全てにおいて激しい競合があるが、全体には極めて互恵的である。思うに、我々は中国との間にも、その他のパートナーとの間にも、同様の関係を築かねばならない。何よりも、それは中露だけのものではないのだ。将来的には、そこにはイランやモンゴル、もしかすると朝鮮(訳註:ここでは韓国か北朝鮮のいずれとは明示されていない)やインドも加わってくることが考えられる。これは世界の新たな経済的中心を打ち立てる拡大メガ・プロジェクトとなりうるものである。
――時に専門家からは、このプロジェクトにおいてロシアが中国の「ジュニア・パートナー」となる危険性が表明されますが。
カラガノフ:そのような危険性は存在する。しかし、そのように言う人に対して、私は、ロシアの力を過小評価しないようにと申し上げたい。たしかに我々は経済においては中国に遅れをとっているが、今の我々は世界のアリーナにおいて等しく偉大な登場人物なのである。
今後とも中露の対等性を保つためには、2つの帰結が存在する。それら2つの方向性はパラレルに発展しなければならない。第1の、なおかつ最も重要なことは、ロシアが8年に及ぶ経済的停滞から脱しなければならないということだ。我々は、ロシアが真に競争力を持つ分野、そして東方において、成長に都合のよいよう経済政策を決定的に変更せねばならない。そして第2の方向性は、ユーラシア・プロジェクトにおいてその他の強力なプレイヤーを巻き込まねばならないということだ。ここには、インド、イラン、域内のその他の国々が含まれる。潜在的には、ヴェトナムあるいはインドシナ半島の他の地域大国もここに加わるだろう。もちろん中国は巨大な大国であり、将来もそうだろうが、いかなる形でも覇権国家となることはない。そして中国は、欧州大西洋体制において米国が占めてきたような、そして現に占めているような地位を占めることはないし、それは不可能である。
中国の明らかな西側への指向とシルクロード経済地帯とは、要するに中国西部の発展であり、中国から欧州へ至る西方への伸長であって、これが中国東部において米国との対立がますます激しくなりつつあることと関係しているのはたしかである。最近公表された中国の新たな軍事ドクトリンに私は接してみた。そこにはロシアを脅かすような要素は何もない。ロシアに接する地域においては、中国軍の密度は非常に低い状態に保たれている。これ見よがしなまでに低い、と言ってもいいくらいだ。
モスクワと北京には、安全保障の領域における大きな連携の可能性がある。そしてこの連携は、ユーラシアやその他の地域においても拡大している。現在、我々が直面している危険性の一つは、中露の接近を(彼らの政治的考慮においては)破滅的なシナリオとして恐れる米国が、中国を、そしてある程度までロシアを引き戻そうとすることであると思う。加えて、国際通貨基金では、元が新たな基軸通貨になるのではないかという議論が起こっている。しかし、私は、中国はその方向には向かわないと思う。なぜなら中国は、ユーラシア、既に関係を結んでいる欧州の国々、その他の地域の国々との間で、別個の通貨金融システムを粛々と築き始めているためだ。これは世界の趨勢における強力な潮流の一つだ。
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