2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月24日

 米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問で日本部長のマイケル・グリーンが、8月14日付フォーリン・ポリシー誌ウェブサイトで、米国は「新しい中ロ同盟」を恐れる必要はなく、ウクライナ関連も含め、これまでの米国の政策を変える必要はない、と論じています。

 すなわち、中ロ関係は、ここ半世紀で最も緊密である。習近平の「大国関係の新しいモデル」では米国とロシアが大国とされ、中国の戦略文書には、米国をマネージしロシアと同盟すると記述されている。中ロ両国は、カラー革命に反対し、民族主義を強調するなど、利益を共有する。5月に、習近平は、アジア信頼醸成措置会議(CICA)において、サンフランシスコ体制を攻撃し、同盟やブロックへの反対を述べた。プーチンもこれに同調し、米国の海洋同盟に対抗しようとした。中ロの4000億ドルのガス取引は、ロシアにとっての中国の有用性を示した。

 両首脳は、政策「調整」を約束している。ロシア軍の極東での活動は活発になり、尖閣諸島で忙しい日本の北に問題を作りだしている。中国へのロシアの武器輸出は戦闘機エンジンなど、1990年代のレベルに戻り、スノーデンの暴露事件でも中ロが協力したと見られる。サイバー分野も両国の今後の協力分野と見られる。

 しかし、新中ロ連携は、西側が西太平洋やウクライナへの基本姿勢を変えさせるほどの意味を持つことにはならないだろう。中国は、太平洋での現状変更勢力として台頭しているが、米国経済と国際経済機構に依存している。中ロ両国は、国内でそれぞれ問題を抱えている。プーチンを動かしているのは米国への対抗心だが、習近平は鄧小平同様、米中関係を大切だと考えている。そして、中国は、ロシアにアジアで力をつけさせる気はないし、逆に、ロシアは、資源に貪欲な13億の中国人(極東のロシア人は700万人)を恐れている。中ロ同盟は、米国の同盟システムより弱いものにしかならない。

 しかし、習・プーチン関係は、対ロ外交においては、欧州以外も視野に入れる必要があることを想起させる。冷戦の勝利は、欧州のみの話ではなく、南アジア、太平洋の国も役割を果たした。日本に加え、インドの役割が重要である。ロシアによる武器売却は、対インドが対中国の3倍に上っており、中印対立は、ロシアが中国と緊密な関係を築くことへの制約となる。米国は、インドのモディ政権との関係を強化すべきである。


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