2023年2月4日(土)

サイバー空間の権力論

2015年6月4日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 4月に首相官邸にドローンを落下させた事件では、犯人が自ら出頭し威力業務妨害で逮捕された。微量ながらセシウムが検知されたことや、犯人に反原発等の政治的主張が見られたが故に、にわかにドローンによるテロの懸念が心配された。結果的に、この事件を発端に多くのメディアが連日報道したことは記憶に新しい。

 またこうした事件に影響を受けてか、動画配信サイトで同じく官邸周辺でドローンを飛ばそうとして注意を受けたり、御開帳の行事が行われていた長野市の善光寺の境内に誤ってドローンを落下させた15歳の少年が、浅草の三社祭でドローンを飛ばす、と発言した。このことで警備に負担がかかったことを理由に、少年は威力業務妨害容疑で逮捕された。

 再三の注意にもかかわらず迷惑行為を行う少年にお灸をすえるといった意味で逮捕を半ば仕方がないとの主張がある一方、当然のことながら逮捕は警察権力の横暴であり権力の肥大化を招く、との危惧の声もあり、賛否両論の議論を巻き起こした(本稿とは直接関係ないが、ドローン少年をめぐっては、多額の資金が少年に提供されていたことから、ネット配信メディア等の問題点が指摘されている。詳しくは以下を参照
http://mainichi.jp/select/news/20150523k0000m040176000c.html 
http://www.sv15.com/diary/drone.htm

 いずれにせよ、ドローンに対する規制の声が上がることは必然であったと言えよう。

監視機能を超えるドローン

 こうした事件の一方で、ドローンを利用するユーザーの意図は様々だ。例えば、ジャーナリストはデモや暴動が生じた際に現場にドローンを飛ばすことで、いち早く映像を観察、場合によってはネットで生配信することが可能だ。実際昨年香港で生じた大規模な反政府デモの様子をドローンで空撮した映像は人気を博し、街中に溢れる無数の市民の姿が、香港の人々の感情を画面越しにまざまざと見せつけることに成功している。

 他方、ドローンはデモの鎮圧にも利用される。高圧タイプのエアガンや唐辛子スプレー発射機能を搭載したドローンが、主に政府関係者に向けて販売されている。実際にインドの一部の警察は唐辛子スプレーを搭載したドローンを採用している(http://wired.jp/2015/04/11/pepper-spraying-drones/)。唐辛子スプレーは場合によっては催涙弾以上に強力な武器にもなり、吹きかけられると猛烈な目の痛みや呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある。


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