2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月23日

 米外交政策研究所のチャン上席研究員が、National Interest誌ウェブサイトに5月16日付で掲載された論説にて、米国は南シナ海でより強い態度を取ることに決めたのかもしれない、と述べています。

画像:gettyimages

 すなわち、過去40年の米国の東アジア海洋紛争に対する態度は、1970年12月31日に起草された電報に負うところが大きい。当日複数の中国の巡視船が米国の石油探査船Gulftrexを追尾していた。米国務・国防両省が対策を協議したが、軍事力でGulftrexを保護しないこととした。米太平洋司令部に送られた電報によれば、決定の前提は、米国は地域の海洋紛争では中立を守るという想定であった。

 この想定は、その後何十年にもわたり、南シナ海を含む地域の海洋紛争に関する米国の政策を形づくった。

 5月12日、米国はこの政策を変更しようとしたように見えた。国防省当局者によれば、カーター国防長官は、南シナ海の航行の自由を保障するため、南シナ海で中国が領有する島の12海里(22キロ)以内に米船舶と航空機を送る、などの選択肢を要請した。これには先例がある。1980年代にリビアがシドラ湾の支配を要求したとき、またペルシャ湾でイランが国際航行を妨げた時、米国は船舶、航空機を送った。

 米国が南シナ海の紛争に関与しない政策を取っているのは、オバマ政権の外交姿勢の反映である。エジプト、シリア、クリミア、東ウクライナなどのほぼすべての危機で、オバマ政権は、自らと米国の利益に確信を持っていないようであった。その政策は混乱し、揺れ動くものとして見られた。

 このような状況の下で、中国は自らの目的達成のため、米国が断片的に不快感を表わすのを無視できると考えた。中国は、東南アジア諸国に対する米国の軍事的関与の控えめな増加でも、米・フィリピン間の高度防衛協力協定の締結でも、態度を変えなかった。昨年12月に国務省が南シナ海紛争に初めて直接介入し、中国の要求の根拠に疑問を投げかけたが、中国は米国の警告に耳を傾けるどころか、南シナ海での土地の造成を加速化させた。中国は明らかにオバマ政権の中国政策の信憑性を疑っている。


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