2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月24日

 米軍に対し、戦争の潮目が引いている世界に合うような予算に基づいて、現実の世界で米国を守るよう願うのは正しくない、と述べています。

出 典:Fred Hiatt‘Real world military funding’(Washington Post, May 11, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/a-military-budget-for-the-real-world/2015/05/17/13a92928-fb1a-11e4-9ef4-1bb7ce3b3fb7_story.html

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 上記論説は、米国が同盟国や友邦国のために適切な軍事的措置を取り、また自国の安全保障を維持するためには国防予算が要る、と当然のことを言っている一方で、現実は軍事予算が削減され、その当然のことが実現されていない、として危機感を表しています。

 ゲーツ元国防長官や多数の国防の専門家は、計画されている国防費の削減は米国の安全保障にとって重大な危険である、と述べています。またカーター国防長官は上院での証言で、全兵力の即応能力は憂慮すべき水準にある、と言っています。米国の防衛支出は過去4年間実質ベースで21%削減されたとのことです。今の米国の国防予算は、戦争の潮目が引いている世界にふさわしい予算であるが、現実の世界はそうではないので、もっと国防予算を増やさないと米国は国際的責務を果たせず、国の安全を十分保証できない、と述べています。

 それにもかかわらず米国の国防予算が増えないのは、財政問題のほかに、オバマ政権と共和党主導の議会の間に、予算についてのイデオロギー的対立があるためです。オバマ政権は国防予算を増やすためには増税しろといい、共和党は給付金を減らせといいます。この点について両者が妥協することは至難の技であり、そのシワが国防予算に寄せられることになります。

 オバマがようやく、論説の言う大国の行動主義に軸足を移したことは、米国の指導力の回復のため望ましいですが、それを支える予算が足りないというのでは、折角の行動主義が実績を上げられません。

 本来軍事、安全保障は超党派で進めるべき政策です。それが党派政治に影響されるのは憂慮すべきです。共和、民主両党は論説が指摘するように世界が米国に頼っていることを改めて認識し、国防予算に配慮すべきです。

  
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