2015年2月、交流マッチが初めて開催された際、ロータリークラブに所属している企業経営者は、少年院の取り組みを聞いた後に「厳しいことを言うようですが」と前置きされて、「出院後の就職を考えるならば、ある程度の学力やパソコンの基本操作ができるのは当然のことで、もっと進んで社会人としての教育、最低でも基本的なビジネスマナーまでは身に付けさせる必要があるのではないか」と院長はじめ主要な職員に伝えた。
その後、外部講師の意見交換会の中では、
「少年院が更生に向けて全人格的な教育に時間を費やしていることは理解しているし、実際に彼らと接して少年院の荒れているイメージは無くなりました。環境さえ整えば更生できる子ばかりでしょう」
と語り、しかし……、と続けた。
「16~17歳の子が就職して、生きていくとなれば社会はそれほど甘くありません。彼らは幼すぎます。出院してすぐに就職というのは現状では難しいでしょう。少年院は社会に理解を求めるだけではなく、逆に彼らを社会に送り出すための職業的な教育課程を整える必要があるのではないかと感じました」
少年たちの中にはごく少数だが大学進学を目指して高卒認定試験に挑戦しているような少年もいるが、出院後は就職希望が大半を占める。しかし、以前の取材で出院する際に就職先が決まっているケースは3割程度で、出院者の半数以上は就職先が決まらないまま少年院を後にしていると聞いた。
そこに改善する余地はないのだろうか。
また、外部講師陣の意見交換会の中では、教育が再犯を防止するという意見も多く、通常の矯正教育プログラムの期間を延長してでも学力に応じた教育を施すべきであるという考えもあった。
筆者の意見はこれに近い。社会には定年退職まで企業でバリバリ働いていた人たちが溢れている。また定年退職で一線を退いた教育者も多いのだから、日本は知の宝庫と言えるだろう。既存の矯正教育にプラスして、実際の仕事を想定した教育や、学力向上のための教育ができるのではないだろうか。
文部科学省と組んで少年院内の教育を充実させるという選択肢もあるだろう。