2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月24日

 共通の脅威は、地域の協力を進める良い機会となる。ASEANの中でベトナムが果たしているリーダーシップの役割は非常に有利な点になる。パシフィック・パートナーシップの下での日米協力を、まず、ベトナムに拡大すべきだ。これができれば、ベトナムを通じて他のASEAN諸国、南西アジア、大洋州に拡大することができる。パシフィック・パートナーシップの下で、米国の病院船は中心的な役割を果たしている。最新の病院船を保有する台湾を含め、他国もこれと連携することができる。医療分野での協力は多くの有利性を持っている。それは顔の見える協力であり、そのような協力を通じて関係国は「協力の癖」を築くことができる。生産的な人的交流は協力の基礎となる、と述べています。

出 典:Wallace C. Gregson ‘Disaster Response Operations, Resilience, and Regional Stability in Asia’(National Interest, June 19, 2015)
http://nationalinterest.org/feature/disaster-response-operations-resilience-regional-stability-13146

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 上記は、賢明な提案です。日米が中心になって推進していくべきです。グレグソン中将は、かつて沖縄の米軍司令官を務めた人ですが、沖縄の多くの人々が同人には非常に温かい気持ちを持っているそうです。

 提案の良い点は、まず、自然災害や伝染病対応といった軍の活動の中でも非戦闘分野での合同軍事演習や能力の発展・維持といったことを通じてアジア関係国との協力のネットワークを作ろうとしていることです。この提案は、既に成功裏に行われている自然災害支援を医療・感染症分野に拡大しようとするものです。このような活動は、緊張を高めるような活動ではないので、他国は反対し難いでしょうし、また、関係国にとっては参加し易いでしょう。第二の良い点は、将来は広くASEANの国々と連携するとしても、まず、フィリピンとベトナムとの連携強化から始めようとしているところです。賢明な優先順位です。いずれも人口約9000万で、地政学的にも重要な国です。

 フィリピンとの連携は、昨年11月に台風災害で日米が対応したし、5月には、日本の海上保安庁巡視船とフィリピン沿岸警備隊巡視船が共同訓練をするとともに、日本とフィリピンの間の海上軍事演習が行われました。また、目下、日・フィリピン間で、日本のP3Cも参加して、海上捜索軍事演習が行われています。このような活動を静かに行っていくことは良いことです。

 ベトナムの重要性も理解できます。グレグソンは、軍の伝染病対応協力に当たって、ベトナムを中心に始めることを提案します。合理的な判断です。おそらく、米軍も同様に考えているのでしょう。提案の具体化を期待したいと思います。

  
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