WEDGE REPORT

2015年7月21日

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 米国がこだわった点に「ブレイクアウト」の時間がある。これは核爆弾製造に乗り出してから実際に兵器が完成するまでの時間のことだ。この時間は核爆弾の原料である濃縮ウランの蓄積量と密接に絡んでいるが、イランの現在のブレイクアウト時間は2、3カ月と言われる。合意が履行されて、ほとんどの濃縮ウランが国外に搬出されると、ブレイクアウトは1年にまで広がる。

 つまりイランが核兵器製造に乗り出しても、1年あれば外交的圧力や軍事攻撃で核武装を阻止できるという計算だ。ところが、合意期限が近づくにつれてブレイクアウトは縮小していき、失効時にはほぼゼロとなる。理論上、もしイランがこの時、核武装しようと思えば、極めて短時間でできてしまうことになる。

保守派の利権も絡む

 イランはこれまで再三、核開発は平和利用のためであって核武装が目的ではないことを表明してきた。こうしたこともあり米欧は15年のうちにイランとの信頼醸成を確立し、イランが核の平和利用から逸脱しないよう働き掛けを強めていく方針だ。この中では、核の平和利用の先輩であり、イランと独自のパイプを持つ日本の役割、とりわけ査察受け入れ態勢の構築や原発の安全対策などそのノウハウの伝授が期待されている。

 しかしイランには過去、秘密裏に核開発を進めていた疑惑や、「イスラエルを抹殺する」(アハマディネジャド前大統領)といった過激主義者の顔もあり、イスラエルやサウジアラビアなどはイラン側の“善意”に大きく依存する合意に反発、イランと米国への不信感を深めている。

 合意が発表された14日、テヘランの中心部は歓迎する若者らが声を上げたり、ダンスをするなど熱狂した。しかしその一方で、合意に反対する保守派は会見を開き、合意が最高指導者ハメネイ師の掲げた7つの「レッド・ライン」(超えてはならない一線)の多くを超えたものになっていると主張、同師が合意を無効にするよう期待を露わにした。

 ベイルートの情報筋によると、保守派の中心勢力である革命防衛隊は経済制裁下で、密輸の利権を握っていたが、合意によって制裁が解除されると、利権が打撃を受けることも反対の大きな要因だという。また保守派は合意によって若者ら自由を求める民主勢力が力を吹き返すことを警戒しており、テヘランでは、近く民主勢力への弾圧が始まるのではないかと警戒する声も強まっている。

  
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