このほど歴史的な合意に達したイランと米欧6カ国の核協定は確かに一定期間、同国の核開発を抑制するという点で画期的な意味がある。しかし15年という協定期間が終了した後ではイランが望めば、すぐにも核爆弾を製造できるという怖い現実もある。今回の合意は中東の安定につながるのか。
核爆弾製造までの時間がゼロに
今回の合意は20カ月に及ぶマラソン交渉が実ったものだ。交渉は米国のケリー国務長官とイランのザリフ外相が中心になって進め、2人の会談は50回以上にも達した。合意は、イランの核開発を最大15年間制限するのと引き替えに、イランに対する米欧の制裁を解除する、というものだ。
歓喜の声をあげるテヘランの市民(Getty Images)
合意の有効期間である15年に近づくにつれてイランに科せられた制限が緩和されていくような仕組になっている。秘密裏に開発を続けさせて核保有国にするより、国際社会の監視の下で制限を加えた方がまだマシ、という理屈だ。従ってこの合意期間中もイランは小規模の核開発活動ができ、イランの国家としての威信と核開発の権利が保持できる内容だ。
協議をがむしゃらに進めてきたオバマ米大統領が「世界がより平和になった」と自賛、イラン側も「目標としていたすべてを獲得した」(ロウハニ大統領)と満足感を表明しているのに対し、イランと敵対するイスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的な過ち」と合意を非難している。
合意にはこのように賛否両論あり、その評価は歴史に委ねるしかないが、合意の前提がイランの善意に大きく依存するものであることは指摘されなければならない。つまり確かに合意の期間15年は査察などでイランを厳格な監視下に置くことができるが、期限が失効した後にイランが核武装しないという保証はないのである。