2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月24日

 アメリカの政策は、思慮深い軍事力の使用に支えられた賢明な政策や牢固とした戦略ではなく、多くの分野において軍事行動に傾斜しすぎるきらいがある。安定した米中関係という利益に鑑みれば、南シナ海の紛争の平和的解決こそ、正しい方途である、と述べています。

出典:Dennis Blair & Jon Huntsman,‘A Strategy for South China Sea’(Defense News, July 13, 2015)
http://www.defensenews.com/story/defense/commentary/2015/07/13/commentary-strategy-south-china-sea/30084573/

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 米国には、包括的な対中政策、特に対南シナ海政策をつくる必要があり、この論説はその一つですが、軍事安全保障専門家を中心に対中強硬策が強まっている中、軍事的な自制を求めるものとなっています。ブレア・ハンツマン提案は、その点に限界を持っています。つまり、中国に対し何をやってはならず、何をやれるのかについての基線の提示と、それを破った場合の米国の決意の表明に失敗しているのです。ただ、世界のその他の地域における米国の行動も似たようなものなので、それが米国の現状なのでしょう。

 ブレア・ハンツマン提案の新しいところは、中国以外の係争国に領域の確定と資源の開発方法に関する合意を先ずつくらせ、それを域外国が支援し、米国は「法的、政治的、軍事的な行動」によって支持するという点です。これは、中国の既成事実による自己の立場の強化という政策に対する有効な外交的な対応策となり得ます。

 同時に「国連海洋法条約に規定される海洋の自由を保障」と言っていますが、米国がこの条約に参加していないのでは、米国の立場は弱いものになります。台頭する中国を制約するには、「国際法の遵守」が極めて有効な手立てであることを考えれば、米国議会はそろそろ海洋法条約批准の方向に舵を切る必要があります。また、解釈の統一をはじめ、国際法の中身の確定作業も不可欠となります。

  
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