手強い競争相手スペースX
ロケットビジネスは米国の民間会社スペースX社が06年に新規参入したことで、日本は一層の厳しい競争にさらされそうだ。スペースXは米国のベンチャー投資家イーロン・マスクによって02年に創設された会社で、宇宙輸送を担うロケット「ファルコン9」の開発製造をしている。
15年6月には打ち上げに失敗したが、「ファルコン9」はNASAのISSへ物資補給にも使用され、低価格なことから民間通信衛星市場でシェアを急速に拡大しており、ロシアの「プロトン」の失敗が増えたことから、その分が「ファルコン9」に流れ、既に30機もの打ち上げを受注しているといわれている。JAXAの担当者は「あれほどの低価格でどうしてファルコン9ロケットを作れるのか不思議だ。『H3』の手強い競争相手になる」と話す。
欧州では欧州諸国が資金を出し合って開発したロケット「アリアン5」が多くの民間衛星を打ち上げてきた実績があり、1回の打ち上げで2機の衛星を打ち上げる技術も持っており、民間衛星打ち上げの半分のシェアを持っている。ここも「アリアン5」の後継となる「アリアン6」の開発を決定、20年には試験機を打ち上げる計画だ。
JAXAでは「アリアン6」も日本の「H3」のライバルになるとみている。失敗が増えているロシアのプロトンMは20年以降にアンガラロケットへの移管が決まっており、油断できないライバルだ。
JAXAの「H3」プロジェクトチームの有田誠サブマネージャーは「H3は日本が宇宙にアクセスする手段を将来にわたって確保し、海外ロケットとの競争にも勝っていけるよう、これまでも定評のある信頼性をさらに高めた安くて乗り心地の良いロケットだ。世界中の人にその素晴らしさを知ってもらい、日本のロケットが活躍できる機会を増やしたい」と夢を膨らませる。
小型ロケットも改良
次世代大型ロケット「H3」の開発と並行して、JAXAでは小型ロケット「イプシロン」の改良も進める。「イプシロン」は13年に試験機が打ち上げられ、16年度以降に「強化型イプシロン」を打ち上げる計画だ。500キロ~800キロ程度の地球低周回軌道衛星を打ち上げるのに適しており、観測用の衛星として需要があるため、小型衛星でも日本が得意とする高感度カメラやセンサー技術を組み合わせて世界をリードできる技術を磨きたいとしている。小型ロケットのため、「H3」のような大掛かりな打ち上げ装置などが不要なため、低コストでの打ち上げも可能で、発展途上国からの需要も期待できる。
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