2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月4日

 10月23日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された論説で、米空軍の退役中将デプテューラが、米国の国家安全保障関連衛星打ち上げがロシアのロケットに依存しているのは好ましくなく、依存をなくすための措置を講じるべきである、と述べています。

 すなわち、この8月、ロッキード・マーチン社とボーイング社の合弁会社のUnited Launch Alliance(ULA)は、ロシアから5000万ドルでRD-180型ロケットエンジンを輸入した。RD-180は、現在米国で国家安全保障関連の衛星打ち上げに使われている2つのロケットの1つであるアトラスVロケットの重要な部分である。ULAはRD-180を米空軍、NASA国家偵察局に供給している。

 米国が衛星打ち上げで軍事的にロシアに依存していることは、長らく居心地の悪い現実であったが、ロシアがクリミアを併合し、ウクライナに侵入するに及んで、ばつの悪い負担となった。ロシアは米国の制裁に対し、RD-180の供給停止で報復すると脅しているが、ロシアが知っているように、供給の停止は米国の軍事、情報能力に大きな害を与える。最近の国防省への一報告によれば、今から2020年までの米国の国家安全保障関連衛星打ち上げの56%に、ロシア製エンジンが使われる予定であり、ロシア製RD-180の供給停止の影響は「重大」で「影響を緩和する選択肢は限られている」とのことである。

 米国の軍事、情報能力がロシアの機材に依存していることが賢明でないのみならず、RD-180の購入は、ロシア政府を財政的に支援することにもなる。

 ロシアのウクライナ侵攻後の3月、ヘーゲル国防長官は議会に対し、米国によるロシアのロケットエンジン使用は再検討すべきであると述べ、8月には新たに空軍宇宙司令官に任命されたハイテン大将は米国は「宇宙へのアクセスにつきロシアに頼るべきでない」と述べた。

 米国がロシアのロケットエンジンへの依存をやめるためには、より大胆な行動が必要である。


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