世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月4日

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 まず、軍用衛星打ち上げ市場にただちに競争を導入すべきである。

 現在ULAは、国防省予算で4番目に大きい「発展型使い捨てロケット」(Evolved Expendable Launch Vehicle:EELV)計画の多年度契約のおかげで、市場を事実上独占しているが、競争は技術的突破口を促進し、国民の税負担を何億ドルも軽減するコスト削減に役立つ。国家安全保障上の意義と納税者の利益を考えれば、空軍がなぜ米国のエンジンメーカーとロケット提供者を排除しているのか理解に苦しむ、と述べています。

出典:David A. Deptula ‘The Russians Have Us Over a Rocket’(Wall Street Journal, October 23, 2014)
URL:http://online.wsj.com/articles/david-a-deptula-the-russians-have-us-over-a-rocket-1414105347

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 米国の国家安全保障関連衛星打ち上げがロシア製ロケットに頼ることが、米国の安全保障戦略上好ましくないのは明らかであるにもかかわらず、実際頼っているのは、米ロ関係の現状を考えると驚きです。おそらくロシア製ロケットの購入を始めた2000年ごろは、米ロが対立関係になく、また対立関係になることが予想されていなかったからでしょう。

 定着してしまったロシア依存を軽減、ないし廃止することは容易ではありません。RD-180の代替ロケットの導入には数年はかかるとのことであり、その上論説の提言のように競争を導入することには、現在独占的地位にあるロッキード・マーチン社とボーイング社の抵抗が予想されます。

 しかし、米ロ間に近い将来信頼関係が確立される目途は立たず、米国の軍事、情報能力がロシアの機材に依存していることが賢明でないことは明らかであり、米国の安全保障政策上、依存の軽減ないし廃止に向けた努力が始められることが望ましいでしょう。

 米空軍は、宇宙優勢の獲得を航空優勢の維持と並ぶ主要目的と位置づけています。2015会計年度における宇宙関連プログラムへの投資は72 億ドルに及んでいます。その中でも、EELVの取得には14億ドルと比較的多くの予算が振り向けられ、空軍の重点投資プログラムとなっています。空軍は、EELVの取得理由を「即応性の向上」と説明していますが、その意図をより深く読み解けば、敵の対衛星兵器により既存の衛星が破壊されるリスクを念頭に、平時からコストの安い単機能衛星を定期的に打ち上げておくことや、有事の際には予備の小型衛星を早期に再打ち上げする即応性を維持しておくことで、宇宙基盤システムの強靱性を高める狙いがあると考えられます。

 ULAは、今年3月の時点で「アトラスⅤをあと2年間(2016年まで)製造するだけのRD-180エンジンのストックがある」としている他、現在2機種あるEELVのうち、国産エンジンを使用するデルタⅣの使用頻度を高めることで必要な打ち上げをカバーできると言っていますが、デルタⅣはアトラスⅤと比較して、打ち上げコストが高いという面も指摘されています。今後は、アトラスⅤへの依存を抑えつつ、上記論説のように競争の上での国産化を進められていくというのが堅実な選択肢なのでしょう。

  
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