世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月24日

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 1961年CIAはキューバのピッグズ湾に反政府勢力を上陸させたが、適切な計画、諜報、空からの支援や政治サポートを与えることに失敗した。1995年のエバンズ・トマスの著作 「The Very Best Men」には、見捨てられたキューバ工作員が浜辺からの無線で米責任者を罵倒するシーンがある。シリア人も同じ怒りを感じているだろう。米国はシリアに関して、もっと首尾一貫した戦略を持つべきである、と述べています。

出 典:David Ignatius ‘Lessons from the Bay of Pigs in the Syrian 〝Division 30″debacle’(Washington Post, August 20, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/lessons-from-the-bay-of-pigs-in-the-syrian-division-30-debacle/2015/08/20/f561a29e-4775-11e5-8ab4-c73967a143d3_story.html

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 米国が訓練したシリア穏健反政府勢力「第30師団」の無様な「ヘマ」について、米国政府を批判する記事です。言葉は少ないですが、シリア介入に慎重な姿勢と首尾一貫性のない戦略を指摘するオバマ政策の批判となっています。

 今回の失敗を1961年の対キューバ侵攻の失敗になぞらえていることは、興味深いです。大統領の就任後4カ月、ケネディ大統領は前政権の政策を引き継ぎキューバに反政府部隊を送り込みましたが、種々の判断ミス、失策により同部隊を支援することが出来ず、この作戦は失敗しました。ケネディは自分の責任を認めるとともに、CIA指導部を更迭しました。しかし、その後、ケネディはリアリズムの姿勢を強めキューバ危機などで指導力を発揮したと言えます。同じリベラルでも、オバマはケネディとは違うように見えます。それとも、オバマも最後の1年余りで変わるのでしょうか。

 シリアの混乱が始まって早や5年になります。ISが勢力拡大を始めて1年になります。その間、アサドは国土の半分を支配下から失い、かつて鉄の安定を誇ったシリアは、今や深い内乱、分裂国家になってしまいました。更に、ISという過激な政治勢力が跋扈し、その力は北アフリカやアフガニスタンにまで伸びています。アサドを代替する力と品位を持つ勢力は全く育っておらず、誰と誰が戦っているのかさえ不明確になっています。他方で、筆舌に尽くしがたい人道悲劇は続いています。それに、周辺国はそれぞれの思惑で動いています。シリア問題はそう簡単には解決しないでしょう。

 今大事なことは、ISこそが大悪であるとして対処することではないでしょうか。アサドは既に充分に弱体化されています。アサドを倒せば、シリアはISが支配することになるでしょう。それこそ問題です。より現実主義的な対応が必要 になってきているようです。

 その意味で、幾つかの動きに注目したいと思います。8月11日、サウジの外相が訪露し、ラブロフ外相と会談しました。8月12日には、イラン外相のシリア訪問があり、8月17日には、同外相のロシア訪問がありました。外交的解決のためには、ロシア、トルコ、サウジ、イランなどをも巻き込んで行くことが不可欠です。

 日本も出来ることで貢献していくべきです。経済的貢献はもとより、政治的貢献も可能な時には果たしていくべきでしょう。

  
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